
パン業界の業界研究|就活に役立つ事業構造・将来性・働き方など徹底解説します
人々の生活に密着し、学生からの知名度も圧倒的に高いのがパン業界です。大企業も多く、知名度を武器に毎年多くの志望者を集めています。文系・理系を問わず、人気があり、内定者の多くが難関大学出身であり、倍率が高いことで知られています。したがって、競争を勝ち抜き内定を勝ち取ることは簡単なことではありません。パン業界について正しく理解し、その上で自分の強みや頑張ったことを、パン業界でどう活かせるかを具体的にイメージし面接官に伝えることが重要です。この記事ではパン業界の業界研究を有価証券報告書やシンクタンクのレポートをもとに、詳しくわかりやすく説明しております。この記事を読めば、パン業界の業界研究は完了するでしょう。ぜひ最後まで読んで、パン業界の就活に挑みましょう。
パン業界とは
この章ではパン業界について、以下の4点からご紹介します。
- パン業界の業界構造
- パン業界の将来性
- パン業界の業界分類
- パン業界の最新トレンド
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業界構造
パンのBtoB販売
パンのメーカーのメインビジネスはパンのBtoBビジネスです。
自社の工場で製造したパンをスーパーやコンビニエンスストアなどの小売店、レストランなどの外食業者、学校や職場などの給食業者に販売することで収益を上げています。
パンのメーカーと販売先との間に食品卸売業者を介する場合もあります。
どちらかというと、パンのメーカー→食品卸売業者→販売先という流れが一般的な商流であり、販売先から最終的に消費者のもとに届けられます。
食品卸売業者を介する場合には中間マージンが発生するため、最終価格が高くなってしまいますが、パンのメーカーが個別の販売先に大量の品種のパンを少量で納品するのは非効率であるので、食品卸売業者を介するのです。
一方で、中間マージンを排除して最終価格を下げるためにパンのメーカーと販売先との間で直接取引契約を締結する場合もあります。
パンの原材料は小麦ですが、日本の小麦の食料自給率は約12%しかありません。
なかでもパン用小麦はさらに低く、ほとんどを輸入に頼っています。
したがって、パンの製造メーカーは国内素材のみでパンを製造している場合を除いて、原材料である小麦を海外から輸入し、国内の工場で製造・加工しています。
パン用の小麦の輸入は自社で行うこともありますが、食品商社や卸売業者から仕入れることもあります。
小麦の価格は世界の需要動向や為替動向の影響を受けます。
また、最近では中国を中心とするアジア諸国の購買力が向上しているため、小麦の需要が世界的に増加しており、必要な供給量を画するためにコストが増加してしまいます。
パンは消費者の購入頻度が高く、他の食料品や工業製品と比べて単価が安いので、製品によって多少の違いはあっても、消費者は価格の動向に敏感になっています。
パンの原材料のコスト増を販売価格に転嫁すると消費者の心境に悪影響を与え、競合他社との価格差が開くことによって販売数量の減少に直結します。
パン業界のビジネスモデルの特徴として、一個あたりの単価が低く、利益率が低いので、大量に生産し、できるだけ価格を抑えて、販売数量を稼ぐというポイントがあります。
したがって、原材料である小麦の調達コストが上がって、製造原価が高くなったとしても、販売価格に反映することが難しいという特徴があります。
パンの販売数量を向上させるためにパンのメーカー各社はパンの製造・販売だけではなく、原材料や商品の研究開発を行っている他、小売店への提案営業も行っています。
提案営業とは自社のパン製品を売れ筋商品として、店舗の見やすい高い棚に大きく、場所を確保し、かつ長期間パンを置いてもらうための営業活動です。
店舗販売
パンのメーカーのなかにはパンの店頭販売を行っている会社もあります。
自社の工場で製造したパン商品を販売している場合もありますが、店舗でパンを製造し、できたてのパンを製造するベーカリー型の店舗を経営していることもあります。
これらの店舗は駅前や大型のショッピングモール、デパートなど様々な場所に出店されています。
小売店販売や食品卸売業者を介する販売では中間マージンが上乗せされますが、直売店舗で販売することでより低価格で消費者に商品を販売することが可能になります。
これによって企業全体の収益力が向上するだけではなく、エンドユーザーである消費者と直接販売を通してコミュニケーションを取ることが出来ますので、新商品開発のサイクルも活発化します。
パンの輸出及び現地販売
敷島製パンに代表されるようにパン商品の輸出や現地販売を行っている企業もあります。
ユネスコの無形文化遺産に和食が登録されたこともあって、日本食や日本の食事文化が海外で人気を集めていることが追い風になっています。
また、最近では訪日外国人観光客が増加しており、帰国後に日本文化の体験したいという需要を取り込むために輸出や現地販売に注力しています。
パンの賞味期限は製造してから1週間程度であると言われているので、輸出の場合は冷凍パンの輸出が一般的です。
一方で現地販売の場合には現地企業と合弁会社などを設立して現地の工場でパンを製造し、コンビニエンスストアなどで販売しています。
現在は新型コロナウイルスの影響で飲食業界は深刻な営業不振になっていますが、ECサイトでの販売や家庭向けのデリバリーサービスを展開することで売上を伸ばしています。
パン業界の市場規模・将来性
市場規模
業界動向サーチドットコムによると、2019年-2020のパン業界の市場規模(主要対象企業4社の売上高の合計)は1兆0,440億円、業界の伸び率は+1.2%となっています。
パン業界は毎年市場規模が微増している傾向にありますが、これは人口比率の高齢化に要因があると見られています。
高齢者の方にとって調理に時間がかかる米よりも手軽で胃への負担の少ないパンの需要が大きいためです。
2010年代後半は戦後最長の好景気と言われ、消費マインドが改善しましたが、パン市場を押し上げる家計所得の増加は認められず、パンを含む食品支出は伸び悩んでいます。
一方で、高級食パンブームの到来によって、大手ホールセールメーカーが「メガ食パン」をリニューアルしたり、「拘り商品」の展開などで、パン業界にとってプラスに作用しました。
さらに100円パンやPB食パンなど低価格志向に走っていた消費者のパン消費が変化しました。
これらの傾向は新型コロナウイルスの感染拡大によってどのように変化したのでしょうか。
農林水産省の食品産業動態調査によると、2020年のパン生産量はの126万4,926トン(前年比+1.4%)となりました。
また、内訳として食パンが60万7.043トン(前年比+1.8%)、菓子パンが41万4,878トン(前年比+1.8%)、その他のパンが22万2,376トン(前年比+1.4%)となりました。
これは新型コロナウイルスによる外出自粛や政府による在宅勤務の推奨の影響で家庭内での食事の機会が増加し、菓子パンや食パン、調理パンの消費量が増えたことに因ります。
スーパーマーケットやドラッグストアを中心に食パンや菓子パンを購入する消費者が増えたと見られています。
一方で、小学校や中学校など学校給食で消費される学校給食パンが休校の影響を受けて、2万629トン(前年比△14.6%)となりました。
また、外出自粛や営業規制の影響を受けて、コンビニエンスストアや街中のベーカリー、百貨店、商業店舗での販売数も減少しました。
さらに、総務省の家計調査を見ると、2020年のパンの1世帯(2人以上)当たりの年間支出額は3万1,456円と前年から2.2%減少しましたが、パンの支出額は2011年以降は一貫してにコメを上回っており、2020年時点ではパンへの支出額はコメより31.5%多くなりました。
将来性
現在のところ毎年パン業界の市場規模は拡大していますが、長期的には市場環境は厳しくなると予想されています。主な要因として以下の3点があります。
1つ目は人口減少です。
パンなどの食品は生活に欠かせないものであり、不況に強いと言われてきましたが、消費者の絶対数が減少することは避けられません。
国立社会保障・人口問題研究所の将来推計によると、日本の総人口は2008年をピークに減少に転じており、2010年に約1億2800万人だった日本の人口は、2030年には1億1600万人、2050年には日本の総人口は1億人を下回ることが予測されています。
また、人口減少と同時に少子高齢化が進み、パンの消費が旺盛な若者や育ち盛りの子供の数が減り、食の細い高齢者が増えることで、パンを含む食品への需要が低下します。
このような状況のなかで食品業界は生き残るためにコストを抑え、販売価格を下げて競争をしています。
現在は、パン業界の市場規模は緩やかな右肩上がりで成長を続けていますが、長期的に見ると業界を取り巻く環境は徐々にきびしくなることが想定されます。
2つ目は従事者の減少です。
こちらも人口減少や少子高齢化と密接に関連しています。
農林水産省の「(2)食品産業を取り巻く状況の変化とその対応」によれば、食品産業に密接に関連する国内の人口は、2011年から2020年までに2.9%(372万人)減少する一方で、65歳以上の高齢者の割合(高齢化率)は23.4%から29.1%に上昇すると見込まれています。
これによって深刻な労働力不足となり、パン業界の人材不足が懸念されています。
3つ目は原材料費などの高騰です。
パンの製造には原材料と成る小麦や油脂類、乳製品、イーストなどが必要不可欠です。
しかし、中国を中心とする新興国におけるこれらの原材料の需要の増加や世界的な天候不良が影響し、これらの原材料の価格が値上がりしています。
さらに上述の通り、パン業界に従事する労働者や流通・物流に携わるドライバーの不足によって人件費や物流費も上昇しています。
こうした要因の解消は純粋なコスト削減や効率化だけでは難しいので、各社ともパン製品の値上げをしていますが、消費者の節約志向が高まっていることもあり、販売量の減少が懸念されています。
業界の分類
大手パンメーカー
明確に大手パンメーカーという区分があるわけではありませんが、CMなどでよく知られているパンの製造メーカーを指して、大手パンメーカーと呼ぶこともあるようです。
例として、山崎製パン株式会社 、フジパン株式会社、 株式会社サンデリカ、敷島製パン株式会社、伊藤製パンなどがあります。
最新のトレンド
パンの消費量の増大
昔から日本人にとって主食と言えば「米」でしたが、近年では米とパンの逆転減少が起こっています。
農林水産省の「食品産業動態調査」によると、2020年のパン生産量(小麦粉ベース)は126万4,926トン(前年比+1.4%)となりました。
内訳として食パンが60万7.043トン(前年比+1.8%)、菓子パンが41万4,878トン(前年比+1.8%)、フランスパンや調理パンなどのその他のパンが22万2,376トン(前年比+1.4%)となりました。
消費ベースで米とパンを比較してみましょう。
総務省統計局の「家計調査」によると、1983年に57.2%を記録していた米類が、2003年には42.4%に下落する一方で、パンは21.2%から31.4%へと大幅に上昇しており、2014年から18年まで5年連続で、1世帯当たりのパンの支出額が、米の支出額を上回っています。
消費額としては2020年には米の23,920円に対し、パンは31,456円と差が広がり始めています。
パンの需要が伸びている背景としては、食生活の欧米化や若年層を中心とした米離れ、一般家庭の朝食のパンの浸透や孤食・個食などの影響に加え、増加する共働き世帯による時短・簡便ニーズ、パンの消費量が大きい高齢者の増大などが挙げられます。
さらに新型コロナウイルスによる外出自粛や政府による在宅勤務の推奨の影響で家庭内での食事の機会が増加し、スーパーマーケットやドラッグストアを中心に食パンや菓子パンを購入する消費者が増えました。
このような経営環境のなかで2020年の各社の業績は、山崎パンが9,956億円(前年比+0.5%)、第一屋製パンが247億円(前年比△1.6%)、日糧製パンが175億円(前年比+0.6%)、コモが62億円(前年比+8.8%)と好調な結果となりました。
食パンの需要増
新型コロナウイルスの感染拡大によってパン業界ではパン製品の種類によって明暗が分かれています。
緊急事態宣言による外出自粛や政府によるテレワークの奨励によってコンビニや飲食店、駅の売店などの利用者が減少し、菓子パンや調理パンの需要が低迷しています。
また、ホテルやサービスエリア向けの業務用の冷凍パンも不調と成っています。
一方で需要が増加したのが食パンです。
総務省の「家計調査」によれば、食パンの購入数量は3月が前年同月比4.7%増、4月が7.2%増、5月が15.2%増と大きく増加しました。
学校の休校や在宅勤務の普及、外出自粛によって調理時間に余裕ができたことや家庭で食事をとる機会が増えたことで食パンにニーズが流れています。
実際、業界首位である山崎製パンの2020年12月期決算を見ると、主力の「ロイヤルブレッド」の売れ行きは、前年同期比が2ケタ増を記録しています。
その他「ダブルソフト」や「ふんわり食パン」も好調となりました。