
警察庁の業界研究|就活に役立つ事業構造・将来性・働き方など徹底解説します
警察官僚は霞が関の中でもエリート中のエリートであり、東大生を中心に国家公務員を志望する学生から羨望の眼差しで見られています。警察権を行使する強大な権限を有しており、日本の行政や国民生活に大きな影響を与える仕事ができます。学生の人気が高く、最も難易度の高い警察庁の内定を取るためには警察庁の省庁研究を徹底する必要があります。この記事では警察庁の採用ホームページや警察庁の白書、関係法令、政府の治安関連レポートなどをもとに警察庁の活動内容や警察官僚の仕事内容を解説しています。さらに官庁訪問に向けた準備も解説していますので、ぜひ参考にしてください。
警察庁とは
警察庁は警察制度の企画立案、国の公安に係る事案についての警察運営、警察活動の基盤である教養・通信・鑑識等に関する事務、警察行政に関する調整等を行う国家公安委員会の特別の機関です。
日本における警察は明治7年、当時の内務省に警保寮が設置されて以来、第二次世界大戦の終了まで中央では内務省警保局、地方では知事によって管理運営されてきました。
戦後の昭和22年に警察法が制定され、23年から国家地方警察と市町村自治体警察の二本立ての制度となりましたが、その後29年に警察法が全面的に改正され、警察運営の単位が現在の都道府県警察に一元化されました。
警察の責務については警察法第二条に以下のように規定されています。
警察は、個人の生命、身体及び財産の保護に任じ、犯罪の予防、鎮圧及び捜査、被疑者の逮捕、交通の取締その他公共の安全と秩序の維持に当ることをもつてその責務とする。
国の警察機関として内閣総理大臣の所轄下にある国家公安委員会の管理の下に警察庁が置かれ、全国的視野から治安維持の責務を担っています。
また、警察庁は各種国際会議の主催・参加やICPO(国際刑事警察機構)への幹部の派遣等、「治安先進国日本」の警察として、各国警察との協力や国際的な活動を積極的に行っています。
警察庁は全国警察組織の中枢を占める中央官庁として国家的・調整的見地から治安責任を担い、その所掌事務について都道府県警察を指揮・監督・調整しています。
警察庁の本庁に勤務する職員は行政実務はもとより、若くして都道府県警察で組織運営を経験することになります。
現在の日本では少子高齢化をはじめとする社会構造の変化、あらゆる分野でのDXの進展、多極化する国際情勢といった世の中の趨勢の把握に努め、治安への影響を機微に察知し、最適な対策を講じることが求められています。
警察庁の役割
治安維持
警察庁は犯罪の起きにくい社会の実現を目指して、地域住民の安全安心を脅かす犯罪の抑止対策、犯罪被害に遭いにくい安全安心なまちづくりの推進、ストーカー・DV対策、警備業・古物営業等の適正化、市民生活の安全と平穏の確保、犯罪の予防に関する事務や交番。
駐在所を拠点とした地域警察官の活動に関する事務を行っています。
良好な生活環境を保全することも警察庁の任務となっています。
風俗営業の適正化、銃砲刀剣類、危険物の規制などの行政事務に加えて、売春・人身取引関係事犯や賭博等の風俗関係事犯の取締も行っています。
また、最近ではサイバーという新たな空間における犯罪が活発化しており、警察は安全安心なサイバー市民社会の実現にも取り組んでいます。
サイバー犯罪の取締や抑止、国際連携、民間事業者と連携したインターネット上の違法情報・有害情報対策の推進など安全安心なサイバー市民社会の実現を目指しています。
刑事対応
警察庁の刑事局は全国警察の司令塔として刑事手続のIT化をはじめとする刑事警察に関する制度やその運営に関する企画及び立案、都道府県警察の捜査活動に関する指導、操作手法や刑事関連法令に関する調査研究など広く捜査一般に関することを担当しています。
また、刑事局には捜査第一課及び捜査第二課が設置されています。
捜査第一課は凶悪事件を取り扱っており、社会に大きな不安を与える殺人、放火・被害者の心身に大きな傷を与える性犯罪といった凶悪事件、ひったくりや侵入盗をはじめとする窃盗事件のほか、略取誘拐、人質立てこもり事件や航空機・列車事故といった特殊事件などの捜査を担当しています。
一方で捜査第二課は政治や行政・金融の不正を剔抉する役割を担っています。
政治や行政に対する国民の信頼を揺るがしかねない、あるいは日本の経済・市場システムを内部から蝕む贈収賄事件や選挙違反事件、入札妨害・談合事件、金融関係犯罪といった各種知能犯罪の捜査を行っています。
組織犯罪対策
組織犯罪の壊滅・弱体化を図るために暴力団、薬物密輸組織、外国人組織犯罪などに関する情報の集約・分析を行い、戦略的な組織犯罪対策の企画・立案などの業務を行っています。
また、マネー・ローンダリング対策などを担う日本の資金情報機関として疑わしい取引の情報を集約・分析し、結果を捜査機関に提供するなどしています。
警察庁が特に撲滅に力を入れているが暴力団です。
日本の社会経済を蝕み市民生活の平穏に対する重大な脅威をなっている暴力団の壊滅に向けて暴力団犯罪、特殊詐欺をはじめとする組織犯罪の取締に関する業務、暴力団対策法に基づく暴力団員による不当な要求行為の規制などを担っています。
警察庁の仕事内容
国際犯罪捜査協力
国際捜査共助には相手国の協力が不可欠であり、一定の課題もあるなか、共助の実施を迅速・確実なものにするためには外国捜査当局に対して直接捜査共助を要請できるようにし、さらに要請への対応を義務化するため二国間または多国間の条約を締結する必要があります。
そのような条約交渉の場に出てくるのも警察庁の職員の仕事です。
国によって制度や文化が異なることから条約の内容を詰めていくのは大変な作業ですが、現場警察官の捜査ツールを少しでも増やすために日本警察を代表して業務に取り組んでいます。
制度の構築を通じて社会の安全・安心を確保することは警察庁職員ならではのやりがいといえるでしょう。
テロの未然防止
警察はインテリジェンスと称される情報収集・分析活動に加えて、法執行権限も有する日本のインテリジェンスコミュニティにおけるユニークな存在です。
敵方の意図や能力察知のための想像力や対策を生み出す創造力を存分に発揮して、これらの権限を行使します。
海外治安情報機関や都道府県警察、または民間事業者と協力して対策を練り上げたときのやりがいは大きいものがあります。
法改正
近年、元交際相手の使用する自動車などにいわゆるGPS機器を密かに取り付けてその位置情報を取得する事案等が発生しています。
また、2019年7月の最高裁判決においてこのような行為がストーカー規制法で規制する「住民等の付近において見張り」をする行為はあたらない旨判示されました。
そこで警視庁においては位置情報記録・送信装(GPS機器等) を用いた位置情報の取得行為等に対する規制の新設を内容とするストーカー規制法改正法案を国会に提出し、同法は2021年5月に成立しました。
法改正の過程では科学技術の進展によりストーカーの手口が変遷する中でどのような規制を設けるかなどいくつもの課題がありましたがストーカー対策の制度設計に直接かかることは霞ヶ関での政策立案業務の醍醐味を大いに感じられるものです。
最新のトレンド
新型コロナウイルスへの対処
2020年初頭より新型コロナウイルス感染症が拡大し、多くの国民が経済活動の自粛を余儀なくされるなかで、コロナ禍を利用した犯罪も増えてきています。
例えば、緊急事態措置として行われた休業要請等に従って休業している店舗等への侵入窃盗や、感染拡大に関連した詐欺等の感染拡大に伴う混乱等に乗じた犯罪や、行政機関をかたるワクチン接種に関連した不審な電子メール、マスク不足に便乗した詐欺サイト、偽の給付金の申請サイト等も確認されています。
具体的な事例としては熊本にて無職の男(23)が2020年5月、緊急事態措置として行われた休業要請に従って休業していた居酒屋に侵入し、現金3万8,000円を窃取したとして、建造物侵入罪及び窃盗罪で逮捕されています。
さらに感染拡大対策に関連した給付金をだまし取る詐欺等、事業者への経済支援に乗じた犯罪も発生しています。
警察庁では「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」を制定し、同方針に基づき、関係機関との連携を図るなどして、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う混乱等に乗じた犯罪に関する情報の入手に努めるとともに取締りを徹底しています。
サイバー空間の犯罪
インターネットが国民生活や社会経済活動に不可欠な社会基盤として定着する中、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止の観点から、行政手続のオンライン化やテレワークの積極的な実施が進められています。
これによってインターネットの活用はさらに進み、業務や取引に関するデータをオンラインで取り扱う機会が増加したことで、今やサイバー空間は全国民が参画し、重要な社会経済活動を営む場となっています。
一方で近年、サイバー犯罪・サイバー攻撃はその手口を深刻化・ 巧妙化させつつ多数発生しており、サイバー空間における脅威は極めて深刻な情勢となっています。
警察庁によれば、2020年中の警察によるサイバー犯罪の検挙件数は過去最多となりました。
また、インターネットバンキングに係る不正送金事犯の発生件数・被害額も引き続き高水準で推移しています。
これらの被害の多くは、金融機関を装ったフィッシングによるものと考えられています。
このほか、スマートフォン決済サービスの不正振替事案や、いわゆる「SMS認証代行」を用いて不正にアカウントを取得させる事案が確認されています。
警察庁では不正アクセス行為の犯行手口の分析に基づき、関係機関等とも連携し、広報啓発等の不正ア クセスを防止するための取組を実施しています。
さらに不正アクセス行為による被害防止のための広報啓発に資することを目的として、民間企業や行政機関等に対する「不正アクセス行為対策等の実態調査」及び 「アクセス制御機能に関する技術の研究開発状況等に関する調査」を例年行っています。
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約90%の質問に回答が寄せられています。