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航空機 業界研究

航空機業界の業界研究|就活に役立つ事業構造・将来性・働き方など徹底解説します

日本のものづくりを代表するのが航空機メーカーです。日本の航空機の歴史は大正時代に始まり、戦後は一時衰退しましたが、現在では日本が世界最高水準の技術を持つ分野として知られています。最先端のものづくりに関われるため文理を問わず多くの学生から注目を集めています。 航空機メーカーから内定を獲得するために航空機のビジネスモデルや商流、重工メーカーにおける位置づけなどを理解しておく必要があります。その上で自分の強みや頑張ったことを、入社後にどう活かせるかを具体的にイメージし面接官に伝えることが重要です。この記事では重工メーカー各社の有価証券報告書や民間団体・公的機関のレポートを参考にし て業界研究を行っています。ぜひ最後まで読んで就活対策を万全にしてください。

航空機業界とは

この章では航空機業界の

  • 業界構造
  • 将来性
  • 業界分類
  • 最新トレンド

について解説していきます。
 

業界構造

航空機の製造・販売

航空機は航空会社が安定して経営を続けていく上で極めて重要な資産であり、日本の社会イン フラを空から支える存在として、経済・社会インフラとして欠かすことができない存在となっています。
航空機製造業界は航空機を組立てる完成機メーカーに、機体構造、エンジン、装備品を供給する専門メーカー、これらを支える航空機部品メーカーから構成されます。

航空機メーカーの主要顧客は航空会社であり、完成した航空機をBtoBビジネスで販売しています。
一般的な工業製品の場合はメーカーと顧客企業の間に機械の卸売業者(特約店、代理店など)が介在し、一度卸売業者に販売されてから、卸売業者が各企業に対する窓口として製品の販 売を担っていることが多いですが、航空機メーカーの場合は異なります。
卸売業者が介在するのは、大量の商品を個別の小売店に必要な分だけ販売するためですが、航空機の場合は一機当たりの単価が高く、小売店が大量の在庫を抱える恐れもないので、基本的には航空機メーカーと 航空会社が直接契約を締結しています。

航空機は一般消費者向けの製品ではないので、航空機メーカーはすでにある商品を大量生産して、顧客となる航空会社がカタログから製品を選択するというビジネスモデルは基本的に採用していません。
顧客からのヒアリングや海外の航空機のトレンド、市場の動向などをもとにして航空 会社の要求に応えながら製品を開発・設計します。
航空機の完成メーカーだけではなく、機体構造、エンジン、装備品を供給する専門メーカー、その他航空機部品メーカーなど多くの下請け企 業が存在し、航空会社の要求水準を満たす航空機を完成させます。

航空機は一度納品されたら 航空会社が長期間使用することを前提としています。特に航空機は整備し各パーツを交換すれ ば半永久的に飛行可能ですが、年数経過に伴い整備コストがかさむため、平均20年程度が採算運航年数といわれています。
そのため、要求水準を満たしているかをチェックするために試作 品を何度もテストします。
顧客のニーズを満たす製品であると判断された場合には顧客向けに 販売、もしくは輸出されます。
 

航空機のメンテナンス

航空機メーカーの主要なビジネスには製造・販売以外にメンテナンスがあります。
航空機は航空 会社において長期間運用されることが前提で製造されていますので、航空機を納品したらビジネ スが完結するわけではなく、丁寧なアフターサービスが必要となります。

また、航空機を製造する 過程で使用される部品の種類や数は非常に幅広く、約100万から300万の部品が必要になると言われています。
そこに使われている機械、電子・電気、ソフトウェアに最先端の技術も多く含まれており、航空会社だけではメンテナンスの対応が難しいという事実があります。
また、航空機は 多くの乗客の命を預かっており、上空での故障や不具合が大きな事故につながる可能性があるので、メンテナンスは慎重に行われています。

航空機メーカーが航空機のメンテナンスにどのように関与するのかは大きく分けて3つあります。

1つ目は航空機メーカーが航空機の納入の際に提出したマニュアルにしたがって、航空会社が 自らメンテナンスを行う方法です。
こちらはセルフメンテナンスと呼ばれ、最も一般的に行われて おり、重大な不具合がない限りは航空会社の技術員が対応します。
また、航空機メーカーが航空 会社に専門家や技術員を常駐させて、定期的にメンテナンスを行う方法もありますが、航空会社が単独で技術員を保有しているため、一般的には行われていないようです。
その他にも航空機 に重大な故障や不具合が生じた場合に航空機メーカーが航空会社に対して専門家を派遣して修理する方法もあります。

これらのメンテナンス方法の場合は製品の納品後に一定の保証期間が設定されていることが一 般的です。
保証期間中はメンテナンスは無償で行い、保証期間を経過するとメンテナンスが有償に切り替わる仕組みです。
メンテナンスが有償に切り替わり、メンテナンス費用が収益となります。
現在では、有償メンテナンスも航空機メーカーにとって貴重な収益源となっています。
しかし、 現在では、一部ではIoT技術を組み込んだシステムを構築しています。
例えば機械を使った分だ け請求し、ユーザーは使った分(稼働時間分)だけ支払うサブスクリプション・モデルも可能になってきました。
 

航空機及び部品の輸出

航空機メーカーは航空機や航空機の部品の輸出を行っています。
実際には航空機本体よりも機 体部品やエンジン本体、エンジン部品、装備品、航空機に搭載するソフトウェアなどが輸出されています。
航空機には100万から300万の部品が使用されていますので、その他にも様々な部品が 輸出されています。

一般的な商流としては航空機メーカーが航空機や航空機の部品を開発・製造して後に、国内もし くは海外の代理店に販売されます。
この時点で航空機メーカーの利益として計上されます。
代理 店に販売された機械は海外の販売手に販売され、最終的に現地の顧客企業に納品されます。
 

市場規模・将来性

市場規模

基幹産業化に向けた航空ビジネス戦略に関する関係省庁会議決定によれば、日本の航空機産業全体では売上高は約1兆 8,000 億円となっています。
このうち民間航空機分野のシェ アは防衛航空機分野を既に上回り73.7%を占めています。
これはアメリカの航空機産業の10分の1程度の規模であり、売上高の対GDP比は欧米の主要先進国で1%を超えているのに対し、日本はまだまだ0.38%にとどまっています。
一般社団法人日本航空宇宙工業会が発表している「航空宇宙データベース」によれば、日本の 航空宇宙工業生産(売上)高の長期推移は以下とおりです。

(単位:百万円)

  機体 エンジン その他機器 合計
2001 622,057 253,845 145,995 1,021,897
2002 623,845 244,643 137,999 1,006,487
2003 525,110 245,278 134,814 905,202
2004 594,788 253,792 120,231 968,811
2005 620,321 305,685 123,563 1,049,569
2006 685,403 330,556 126,354 1,142,313
2007 611,392 367,943 133,065 1,112,400
2008 730,546 360,689 134,525 1,225,760
2009 649,002 322,247 114,154 1,085,403
2010 634,995 319,105 112,252 1,066,352
2011 577,917 347,558 112,101 1,037,576
2012 695,101 385,068 103,643 1,183,812
2013 856,283 439,078 121,632 1,416,993
2014 1,056,418 481,094 117,215 1,654,727
2015 1,089,070 583,237 119,748 1,792,055
2016 995,281 591,871 118,687 1,705,839
2017 959,453 642,042 135,377 1,736,872
2018 997,975 714,378 125,973 1,838,326
2019 970,521 760,757 137,647 1,868,925
2020 671,892 466,396 125,064 1,263,352

上記の表を見れば、分かる通り、機体の完成品が市場全体の半分以上を占めています。
それに エンジン、その他機器と続きますが、航空機の生産に100万から300万もの部品が必要であり、 かつソフトウェアなどハイテクな技術が求められることから世界中で需要が根強く、機体やエンジ ンの生産が大きく落ち込んでいる2020年にも大きな減少は見られませんでした。

航空機の市場規模の推移を見てみると、2000年代以降緩やかに拡大し、2008年には1兆2,000 億円を突破しましたが、2009年のアメリカ発のサブプライムローン問題やリーマンショックによる 世界的な金融危機によって2009年には1兆円まで減少しました。
しかし、その後、2012年の政権 交代を機に景気が拡大し、近年は再び拡大傾向にあります。2019年には過去最大の1兆8,000 億円まで市場が拡大しました。

しかし、2020年には新型コロナウイルス感染症の影響で世界的 に観光需要が消滅。
航空会社からの発注も大幅に減少し、市場規模は2008年頃の水準まで落 ち込んでいます。
ただし、上述のようにその他機器に関しては世界的にハイテク部品の需要が根強いことから機体本体やエンジンと比べると落ち込み幅はわずかにとどまっています。

ただし、世界市場に目を向けると2015年にアメリカのボーイング社が発表した航空機産業の市 場規模によれば、世界の主要旅客機シェアは、アメリカのボーイングとフランスに本拠地を置くエアバスが90%超を占めており、日本企業の世界的なシェアは限定されているのが現状です。
 

将来性

航空機市場の需要予測についてはアメリカの航空機メーカー大手ボーイング社がレポートを発表しています。

それによれば、目下のところは新型コロナウイルス感染症のために航空機需要は低迷していますが、現状のままワクチン接種が順調に推移した場合には2024年までに市況の悪化は停止すると予想しています。
2030年までには世界中で約1万9,000機の商用機の需要が生まれ、保守・整備などのサービス需要や軍用を含めた市場規模は10年間で9兆ドル(約990兆円)に上る見込みです。

世界観光機関(UNWTO)は世界の観光市場が「コロナ前」の水準にまで回復するのは最短で2024年になるとも予測していますので、ボーイング社の予測はこれを反映 したものと思われます。
さらに今後10年間で主に小型旅客機と貨物機を中心に商用機の需要が 回復し、新造機の需要が3.2兆ドル、整備などのサービス需要も3.2兆ドルになると予想しています。

また、一般財団法人日本航空機開発協会も航空需要に関する予測を発表しています。
同協会 の「民間航空機に関する市場予測」ではジェット旅客機の運航機数は、2019年末の24,015機から2040年末には38,868機に増加し、地域別には北米(23%)、欧州(23%)、中国(16%)、が多く、この三者で世界の納入機数の62%を占めます。

ボーイング社の調査でも予測されていましたが、最も需要が旺盛なのがアジア地域であり、 北米と欧州(西欧と東欧)では市場の成熟化もあって20 年間の平均成長率は3.0%および 3.5%であり、世界全体と同程度かやや低い伸び率となる一方で、アジアに関しては中国、ASEAN 諸国およびインドが中心となって年率 4.5% の成長を続け、そのシェアは 34%から41%に拡大すると予測されています。

このように世界、特にアジア地域では市場が大きく拡大すると予測されることから日本の航空機 メーカーがいかにこれらの需要を取り込んでいくかが今後の成長の鍵となります。

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