
【パートも労災を受けられる?】補償内容や受けるための手続きなどについて
皆さんは労災について詳しくご存知でしょうか。何となく正社員にしか関係ない制度のように感じている方も多いのではないでしょうか。しかし労災は、パートやアルバイトの方でも受けることができます。今回はパートやアルバイトでも労災は適用されるのかなどご紹介していきますので是非参考にしてみてください。
パート・アルバイトでも労災を受けられる
皆さんは労災について詳しくご存知でしょうか。何となく正社員にしか関係ない制度のように感じている方も多いのではないでしょうか。しかし労災は、パートやアルバイトの方でも受けることができます。
ここではそもそも労災とは何なのか、どういった人が対象になるのか、またどんな補償が受けられるのかといった、労災の基礎を説明します。
労災保険とは
労災保険は、正式には「労働者災害補償保険」といいます。労働災害(労災)が発生した場合に、治療費などの補償を受けることができる保険です。
労働災害とは、仕事中や通勤中などに転んだり、何らかの事故に遭うことにより、負傷してしまったり、死んでしまうことをいいます。
労働災害は仕事中に発生する「業務災害」と、通勤中に発生する「通勤災害」の2つに分けられます。
労災保険の適用者は全ての従業員
比較的多い思い込みに「労災は社員にしか適用されない」というものがあります。しかしそれは誤りで、実際は「全ての従業員」に適用されます。
具体例としては、個人事業者に雇われている場合や、パート、アルバイト、試用期間中の社員、海外出張中の社員、日雇い労働者、外国人労働者、企業の取締役や監査役も含まれています。
職業の種類は問いません。
なお、中小企業経営者の中には「うちは労災保険に入っていない」と考えている方がいるかもしれません。しかし1人でも従業員がいる会社は、労災保険に強制加入させられています。
また届け出の有無に関係なく加入させられていますので、経営者の方は注意して下さい。
「第三条 労災保険法第三条第一項の適用事業の事業主については、その事業が開始された日に、その事業につき労災保険に係る労働保険の保険関係(以下「保険関係」という。)が成立する」
労働保険の保険料の徴収等に関する法律
https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=344AC0000000084#11
このように、個人事業主や代表取締役以外の労働者には、ごく一部の例外(一部の官公署の事業や、特定独立行政法人の職員など)を除いておおむね適用されるのです。
給付内容は正社員と同じ
もしかしたら「大多数の労働者が適用されるとしても、給付内容には違いがあるんじゃないか」と思ってしまうかも知れません。
しかし給付内容についても、正社員やパートの区別なく同じ補償を受けることができます。
ただしここでいう「同じ」とは、「補償金額が同じ」という意味ではなく、「補償金額を求める計算方法が同じ」という意味です。
従って給料が多い正社員よりも、給料が少ないパートやバイトの方の補償金額が少なくなることは起こりえますので、注意して下さい。
労災が適用される内容について
ここからはどのような時に労災が適用されるのか、具体例を交えて説明します。
業務上で発生する業務災害
業務上で発生した労働災害を、「業務災害」と呼びます。仕事中に業務が原因となって発生した労働災害は、業務災害として認められ、労災が適用されます。
具体的な例としては、重いものを持って移動している最中に転んで怪我をした場合や、配達などで荷物を車で運んでいた際に交通事故に遭った場合、高所作業中に転落した場合などがあります。
通勤中に発生する通勤災害
通勤中の事故なども、「通勤災害」として労働災害と見なされます。
ただし通勤とは無関係な、食事や買い物をするなどの寄り道をしていた際の事故については、認められない可能性が高くなります。
なお仕事上の事情などでホテルなどを利用した際は、そこからの通勤についても「通勤災害」と認められます。その他にも通勤災害と認められる条件は細かく定められていますので、必要であれば確認をしてみてください。
労災保険で受けられる補償内容
では労災として認められた場合に、受けることができる補償の内容について詳しく見て行きましょう。
治療・薬等の「療養給付」
業務災害や通勤災害によって怪我や病気の治療を受ける際は、労災病院(労働者災害補償保険法で定められた政府による社会復帰促進等事業を行う病院)や労災保険指定医療機関などにて、無償での治療を受けることができます(治療の現物支給として)。
近所に指定医療機関がない場合は、最寄りの医療機関での治療も可能です。
ただしその際には健康保険で受診するのではなく、必ず労災での利用であることを伝えた上で受診する必要があります。
この場合、受診時に診察料を自分で支払う必要がありますが、必要な手続きをすることで、支払った診察料が全額支給されます。
休業中の生活を支える「休業給付」
労災によって働けない期間が発生してしまう場合、休業給付を申請することで、休業から4日目から休業(補償)給付として賃金の60%、休業特別給付金として賃金の20%が支給されます。なお休業から3日目までについては、会社が賃金の60%を支払う必要があります。
給付される条件は以下の通りです。
- 業務上の事由又は通勤による負傷や疾病による療養のため
- 労働することができないため
- 賃金をうけていない」
厚生労働省 3-1 休業補償はいつまでもらえるのですか。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000154471.html
後遺症が残る場合の「障害給付」
労災による怪我や病気による治療は行ったものの、障害が残ってしまった場合には、障害の程度によって認定される障害等級に基づいて、年金か一時金が支給されます。
また労災による怪我や病気による治療は行ったものの、1年6ヶ月たっても治らない場合には、認定される傷病等級に基づいて傷病(補償)年金が、休業(補償)給付から切り替わって支給されます。
亡くなられた場合の「遺族給付」
労災によって亡くなられてしまった場合は、残された遺族に対して年金、一時金が支給されます。
遺族の人数などの条件によって、支給される金額は増減します。
労災を受けるための手続きについて
次に、労災の補償を受けるために必要な手続きについて説明します。
基本的には手続きは全て会社が行いますが、会社が手続きを拒否した場合には自分で手続きをする必要があります。
会社が行う場合|労務担当者に相談する
労災の申請を行う際は、まず会社の労務担当者に相談して下さい。
一般的には、それ以降は担当者が申請手続きを進めることになります。
しかし中小企業などでは労務担当者が定められていない場合もあり、その場合は自分自身で申請手続きを行わなければなりません。
自分で行う場合|労働基準監督署に相談する
会社の他にも、労働災害を受けた本人が、労働基準監督署に対して申請を行うことができます。ただし当然のことながら、申請に必要な書類は全て自分で用意しなければなりません。
可能であれば、弁護士などに申請のサポートを依頼した方がスムーズに進むでしょう。
まとめ
労災が正社員だけではなく、パートやアルバイトの方でも給付を受けられる事を理解していただけたでしょうか。
労災保険は1人でも労働者を雇っている事業者全てが強制加入させられます。
たとえ会社が加入手続きを怠っていても、保険料の支払いをしていなかったとしても、労働者は労災の申請をすることができますし、認められれば補償を受けることもできます。
もしも労災に遭ってしまった場合には、立場に関係なく正当な権利として必ず申請を行い、補償を受けるようにしてください。
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