
【特別手当とは】賞与との違いやデメリット、翌年度の社会保険料はどうなる?
「特別手当」という項目が給料明細に記載されている人もいるのではないでしょうか。当記事では、特別手当の定義や、特別手当とボーナス(賞与)との違いなどについて解説します。支給された場合の翌年以降の社会保険にどのように影響があるのかについても知っておきましょう。
特別手当とは?
特別手当には、どんな定義があるのでしょうか。
特別手当とは
「特別手当」とは、企業が給与とは別で従業員に支払うお金です。種類としては、以下のようなものがあります。
- 役職手当
- 住宅手当
- 家族手当
- 通勤手当 など
企業によっては、特別手当は正社員だけではなくアルバイトも対象となります。例えば、「深夜・早朝手当」や「休日手当」が特別手当という項目で支払われることもあるでしょう。
特別手当として何が支払われるかは、企業によって変わります。
はっきりとした定義はない
特別手当の定義は明確になく、定義は会社によって異なります。
特別手当は支給する内容やタイミングに決まりがなく、支給ペースも企業によって変わります。
たとえば、インセンティブとして毎月の給与にプラスして手当を支給する会社もあれば、企業に大きな利益が出た際にボーナスとして臨時で支払われるケースもあります。
特別手当の中には、「時間外勤務」「深夜勤務」「休日勤務」などの手当も含まれます。勤務状態によっては、毎月特別手当として、何かしらのお金が支給されることもあるでしょう。
「特別手当」という勘定項目で支払うことは、何かと企業側にとって都合が良いのです。
特別手当と賞与の違い
ボーナスのような報酬が、賞与ではなく特別手当として支払われるケースがあります。
賞与と特別手当は何が異なるのでしょうか。
賞与とは?
賞与とは、企業から毎月の給与とは別で支給されるお金のことです。一般的に「基本給 × ◯ヵ月」という計算で賞与の額が決まる「基本給連動型賞与」を採用する企業が多いです。
厚生年金保険法では、賞与について以下のように定義しています。
(用語の定義)
第三条
この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
賞与は賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が労働の対償として受ける全てのもののうち、三月を超える期間ごとに受けるものをいう。
参照:厚生年金保険法 | e-Gov法令検索
賞与の定義は「年間3回以下の支払いで、金額が定まっていないもの」となります。
賞与は、毎月支払われる給与と異なり、法律上で義務付けられていない項目です。そのため、すべての会社で賞与の支給は保証されていません。賞与支給の有無については求人情報や就業規則を確認する必要があります。
また、賞与の回数・タイミングにも法律で規定はありません。各企業のルールに則って支給されます。
報酬の定義
補足ですが、「報酬」については健康保険法で以下のように定められています。
この法律において「報酬」とは、賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が、労働の対償として受けるすべてのものをいう。ただし、臨時に受けるもの及び三月を超える期間ごとに受けるものは、この限りでない。
定義だけを見ると、企業から従業員に支払われるお金はすべからく「報酬」に含まれ、社会保険の対象になるように見えますが、そうではありません。恩恵的で実費弁償的なものは、報酬とはならないと判断されます。
たとえば、年3回以下の賞与、または退職金は報酬として含まれません。
特別手当と賞与の違い
それぞれの定義と比べると、賞与と特別手当は非常に似ている部分が多いことが伺えます。実は、賞与と特別手当は、同じ扱いをする場合と、しない場合があるのです。
まず、特別手当は金額や支払いペースによって扱いが「福利厚生」なのか「賞与」「給与」なのかが変わります。福利厚生として扱う場合は、社会保険料の対象にはなりません。
しかし、賞与・給与として判断される場合、社会保険料の対象になります。賞与・給与として判断されるケースは、特別手当としての支給額が高額な場合や、定期的であるかどうかなど、総合的な要素が踏まえられます。
企業側が「賞与」ではなく、特別手当としてお金を支払う多くの理由は、企業側のコスト削減です。福利厚生として手当を支払うことができれば、企業が負担する保険料の額が少なくなるメリットがあるのです。
特別手当が支給されたら社会保険料はどうなる?
特別手当は、「福利厚生」「賞与・給与」のどちらに該当するかによって、社会保険の計算が変わります。
賞与として報酬を支給する場合
まず、従業員へ賞与を支給した際、企業は「賞与」という勘定科目に該当します。賞与として報酬を支給すると、会社側も従業員も、健康保険料・厚生年金保険料・源泉所得税の負担が発生します。
賞与の場合、年3回までの支給であることが条件です。そして特別手当の場合、賞与と同様、年3回までの支給であれば「賞与」として扱われることになります。
では、年に4回以上支給をする場合はどうなのでしょうか。4回以上支払われる場合、賞与も特別手当も「給与」の扱いになります。
賞与と給与は社会保険の計算方法が異なります。そのため、企業が従業員に賞与を支払う場合、支払うタイミングや回数によって、従業員の社会保険の負担額が変わることは覚えておく必要があります。
特別手当として報酬を支給する場合
特別手当として報酬を支給する場合、金額や支払いペースによって扱いが「福利厚生」なのか「賞与・給与」なのかの判断が変わります。
まず、福利厚生として扱う場合は、社会保険料の対象にはなりません。
しかし、特別手当が高額で、定期的な支払いがある場合は、賞与または給与として判断される可能性が高いです。「賞与・給与」に該当する場合は、特別手当の支給額が社会保険料の対象とみなされます。
特別手当以外で社会保険の対象にならない手当
補足ですが、福利厚生としての特別手当以外にも、社会保険の対象とならない手当があります。
通貨と現物によるものに分けられます。
1、通貨によるもの
・病気見舞い金
・災害見舞金
・出張費用
・大入り袋など臨時に受けるもの
・健康保険の傷病手当金
・退職金 など
2.現物によるもの
・社宅料(従業員から徴収した金額が標準価額によって算出された額よりも多い場合)
・食事費用(本人から徴収した金額が標準価額によって算出された額の3分の2以上の場合)
・制服や作業服などの勤務服 など
上記のような項目も、社会保険の対象になりません。
特別手当のメリットとデメリット
特別手当としてお金が支給される場合、メリットとデメリットがあります。
特別手当のメリット
賞与と特別手当は、差し引かれる項目が異なります。特別手当として支給されれば、手取り額が増える点はメリットといえるでしょう。
例えば、賞与として企業が支払う場合は、健康保険料・厚生年金保険料が差し引かれた金額が手取りとなります。
一方で福利厚生として特別手当が支払われれば、雇用保険と源泉徴収税のみ差し引かれるので、手取り額が多くなる傾向があるのです。
特別手当のデメリットや注意点
特別手当を支給することで、基本給が下がります。基本給は、賞与や退職金の基準になる金額であり、基本給が下がることで受け取れる金額が下がってしまいます。
また、残業代の計算も基本給が影響します。労働基準法では、以下の計算方法で残業代を算出することが定められています。
残業時間×基礎賃金×割増率
基本給が下がることで、長い目で見たときにトータルで受け取れる金額が下がる可能性があります。これはデメリットといえるでしょう。
まとめ
特別手当とは何なのか、毎月の給料や賞与とはどのように違うのかについて解説しました。
給与明細の項目が「賞与」なのか「特別手当」なのかによって、従業員と会社側のメリットデメリットが変わることがわかります。
特別手当が支給されるものはどんなものなのか、社会保険の対象となるものがどのようなものなのか。この機会に、理解を深めておきましょう。
あらゆる疑問を匿名で質問できます
約90%の質問に回答が寄せられています。