
中小企業庁の業界研究|就活に役立つ事業構造・将来性・働き方など徹底解説します
中小企業庁は日本企業の99%以上を占める中小企業を支援する経済産業省の外局であり、経済産業省よりもより身近に最前線で日本経済の発展に貢献することができます。経済産業省の職員にも中小企業庁への出向する職員は多いそうです。この記事では中小企業庁に興味のある学生に向けて、中小企業庁のホームページや中小企業白書、関係法令をもとに中小企業庁の省庁研究を実施し、その上で中小企業庁に入庁するためのステップについて解説しています。中小企業庁への入庁を希望する方はぜひ最後まで読んでください。
中小企業庁とは
中小企業庁は戦後まもない1948年に中小企業の育成・発展を目的として設置された経済産業省の外局です。
中小企業庁は日本企業の99.7%を占め、全労働人口の7割を占める中小企業357万社の自主的な努力を支えるため、経営の革新及び創業の促進、経営基盤の強化に資する政策を企画・立案・実施しています。
海外展開や新分野への進出の支援、経済的な変化への対応など中小企業が日本経済全体を成長させる存在になるように支援しています。
中小企業庁は、中小企業庁設置法第1条の目的「健全な独立の中小企業が、国民経済を健全にし、及び発達させ、経済力の集中を防止し、且つ、企業を営もうとする者に対し、公平な事業活動の機会を確保するものであるのに鑑み、中小企業を育成し、及び発展させ、且つ、その経営を向上させるに足る諸条件を確立する」を達成することを任務としており、当該任務達成のため業務を行っています。
また、中小企業の資金繰りを支援し、政府の出資している政府系金融機関や独立行政法人中小企業基盤整備機構、信用保証協会、商工組合中央金庫などの管理を行っています。
中小企業庁の役割
経営の革新及び創業の促進
中小企業は日本企業の99.7%を占めており、中小企業を支援することは日本経済ひいては国民生活を支援することになります。
中小企業庁では直接及び政府が出資する政府系金融機関などを通じて、創業や中小企業の経営の革新の取組を支援しています。
近年では新型コロナウイルス感染症の影響により経営が悪化した地域の核となる中小企業の倒産・廃業を防ぐため、官民ファンドによる出資やハンズオンでの経営支援等により経営力の強化とその後の 成長を支援しています。
海外展開や新分野への進出の支援
国内の少子高齢化が進行している中で大企業・中小企業問わず海外市場が今後の鍵となっています。
また、新しいイノベーションを起こして、雇用を創出するためにも新分野への進出を支援することは重要です。
特に近年では新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、日本のサプライチェーンの脆弱性が顕在化したことから生産拠点の集中度が高く、サプライチェーンの途絶によるリスクが大きい重要な製品・部素材、 又は国民が健康な生活を営む上で重要な製品・部素材に関し、国内の生産拠点等の整備を進めています。
これによって製品・部素材の円滑な供給を確保するなどサプライチェーンの強靱化を図ることを目的とし、設備の導入等を支援しています。
政府系機関の管理・運営
中小企業の資金繰りや経営の革新の取組を支援するために中小企業庁以外にも政府系金融機関や独立行政法人中小企業基盤整備機構、中小企業再生支援協議会、信用保証協会、商工組合中央金庫などが存在します。
中小企業庁はこれら政府系機関の管理・運営を行っています。
中小企業庁の仕事内容
被災地の復興支援
近年、日本各地で甚大な被害をもたらす災害が発生する中で被害を受けた中小企業等の復旧を支援することで被災地域の速やかな復興の実現を図る取り組みが重要となっています。
特に被災地支援においては現場の状況を踏まえながら、必要な支援制度を活用しやすい形で届けていくことが大事です。
中小企業庁は経済産業省の経済産業局や地方自治体などと連携して被災した施設等の復旧支援を行っていますが、被災地域の事業者、支援機関、関係省庁などからの問い合わせも多く、中小企業庁が所掌している支援制度のニーズは高まっていることがわかります。
取引慣行の適正化
中小企業庁では「未来志向型の取引慣行」を推進しています。
本施策は「昔からの商慣習だから」で片付けていた不合理な取引慣行を合理的なものにすることなどを通じて、サプライチェーン全体の「取引適正化」と「付加価値向上」を目指すものであり、本来は大企業・親事業者が負担すべき費用等を立場の弱い下請事業者に押し付けることがないように取組を進めています。
本施策に基づく取組の一つとして、型取引の適正化の取組があります。
これは機械の部品を製造する際に用いる金型(金属、樹脂、ガラスなどの素材を正確かつ迅速に成型するために使用するもの)について、部品を使用する製品の生産が終了してもなお、修理対応などの理由から下請事業者が長期にわたって金型を無償で保管させられているなどの問題の改善を図るものであり、中小企業庁の職員が産官学の協議会の立ち上げ・運営、協議会の報告書のとりまとめなどの業務を遂行しています。
習慣を変えることは大きなエネルギーが必要であり、検討に当たっては産業界や有識者と激しい議論となることもあります。
バランスのとれた支援と制度設計
中小企業は事業者全体の99%以上を占め、全労働者の7割を抱えている日本経済の屋台骨です。
しかし、目下の中小企業の状況を考えると、消費増税や働き方改革、賃上げの波など中小企業の経営者にとって負担となるイベントが押し寄せています。
これらはどれも国の財政や労働者の幸せのためには重要な制度ですが、急激に進めれば、中小企業の経営を圧迫し、かえって地方経済の衰退を加速しかねません。
中小企業の事業環境を俯瞰的に見て、事業者の声をしっかり聞き、時には省庁間の調整を行って、バランスのとれた支援や制度の在り方を考えるのも中小企業庁の職員の役割です。
最新のトレンド
中小企業・小規模事業者政策の方向性
2020年初頭より中国武漢で発生した新型コロナウイルス感染症が日本にも広がり、外出自粛やサプライチェーンの混乱によって中小企業は引き続き厳しい状況にあります。
また、新型コロナウイルス感染症とは関係なしに、地方を中心に人口減少が加速し、域内需要の減少が進み、地域の中小企業・小規模事業者の事業の存立基盤が大きく揺らいでいます。
中小企業庁としては地域の中小企業・小規模事業者の現状を踏まえて、小規模事業者の新たなビジネス構築や販路開拓の取組を支援することが重要な政策課題となっています。
また、人口減少により、域内需要が減少していく中では、事業者による生産性向上の取組に加え、地域の需給バランスを踏まえた持続可能な経済圏の形成や地域資源を最大限活用した域外需要の取り込みも必要です。
また、新型コロナウイルス染症の影響が長引く中、中小企業の取引条件 の悪化が懸念されています。
これは大企業に対して、中小企業の立場が弱いことに起因するものであり、「しわ寄せ」を防ぎ、 大企業と中小企業が協力して感染症という危機を乗り越えるためには、取引の適正化を徹底することが不可欠です。
経済産業省及び中小企業庁では取引適正化の実現に向けて、産業界に対して自主行動計画の策定などを働きかけてきました。
また、個々の企業が取引先との連携による生産性向上に取り組むことや望ましい取引慣行の遵守を経営責任者の名前で宣言する「パートナーシップ構築宣言」の仕組みを構築したており、今後宣言する企業が増え、実効的な取組が広がることが期待されています。
新型コロナウイルス感染症と中小企業の資金繰り支援策
新型コロナウイルス感染症によって自己資本の薄い中小企業では資金繰りの維持に問題が生じています。
中小企業庁では感染症の影響を受ける事業者の事業継続を下支えするために持続化給付金や雇用調整助成金などの支援を実施しました。
持続化給付金は2020年5月1日に申請受付を開始し、2021年2月末時点で約423万件約5.5兆円の給付を行いました。
さらに雇用調整助成金は、2020 年1月 24 日以降の期間、感染症の影響を受けて事業の縮小した事業者に対して累次の特例措置を講じ、2021年2月末までに約267万件、 約2.9兆円の支給を実施しています。
また、中小企業庁は関係省庁とも連携し、2020年1月以降、専門の窓口の設置や「セーフティネット貸付制度」の要件緩和、累次にわたる要請を実施するなど、中小企業・小規模事業者の資金繰りに重大な支障が生じることがないよう対応しています。
中小企業にはこれら中小企業庁の実施している支援策に加えて、政府が100%出資する政府系金融機関による無利子無担保の融資制度などが用意されています。
さらに地域の核となる企業の倒産・廃業の防止のために令和2年度第1次補正予算において「中小企業経営力強化支援ファンド」が創設されました。また、抜本的な事業再生を目的とした官民ファンドの組成も支援しており、今後も直接的及び間接的に中小企業の資金繰りを支援する方針です。
中小企業庁の年収
中小企業庁単体での職員の年収は非公表ですが、人事局が公表している「国家公務員の業務状況等の報告」を基にすると、国家総合職採用の職員は1年目で300~400万円程度、30代で600~700万円程度、40代から50代で1000万円を超えてくるイメージです。
また、国家一般職については国家公務員25万3132人のうち、一般職にあたる行政職は14万2236人であり、給与は全職員の平均給与は41万6203円で、行政職に限ると40万8868円となっています。
中小企業庁で求められる人物像・スキル
中小企業庁はどのような人物を求めているのでしょうか?詳しく解説していきます。
採用実績大学
中小企業庁では採用を実施していません。
中小企業庁に入庁するためには経済産業省に入省して、中小企業庁に配属される必要があります。
したがって、経済産業省の採用大学を確認しましょう。
【総合職事務系】
東大11名、京大6名、一橋4名、早稲田3名、阪大3名、慶応3名、神戸大1名
【総合職技術系】
東大13名、京大4名、東工大4名
事務系は3分の1が東大、技術系は過半数が東大出身者となっています。
経済産業省は東大志向が比較的強いと言われています。
志向性やスキル
日本は少子高齢化やエネルギー自給率の低下など様々な課題を抱えており、他国からは課題先進国と言われています。
日本や世界を取り巻く環境が大きく変化する中でこれらの課題を解決する必要があります。
したがって、「何事にも前向きな発想を持ち、『○○だからできない』ではなく『どうすればできるのか』を新たな発想で創造できる人」が求められています。
そのような発想を持って、その実現の為には労を惜しまず、失敗を恐れずに実行する必要があります。
中小企業庁のES・面接対策
最後に中小企業庁の就活対策を解説していきます。
ここが最も重要なところなので、ぜひ参考にしてみてください。
ES対策
志望動機
中小企業庁は採用を行っておらず、経済産業省の職員が配属されるので、入庁するためには経済産業省に入省する必要があります。
したがって、中小企業庁を志望することを前面に出す志望動機を作成してしまうと、他の部署に配属になった場合に業務を遂行する気があるのか疑われてしまいます。
したがって、あくまでも経済産業省の志望動機を作成することが重要です。
それでは、経済産業省の内定者の志望動機を見てみましょう。
北欧の大学院に留学した際に想像以上に日本の経済力が低い評価を受けていることを痛感し、ショックを受けました。
この経験から日本を経済的により豊かにしたいと考え、経産省を志望しました。
地方でで生まれ育った中で人口減少や少子化など日本の産業の衰退を目の当たりにして、豊かな日本を作りたいと考えて国家公務員を志望しました。
その中でも地域経済政策から豊かな生活の基盤である資源・エネルギー政策、産業政策まで幅広く関われる経産省がとても魅力的でした。
このように経済産業省の志望する学生は過去の経験から日本の経済力に問題意識を持っており、それを解決するために経済産業省を志望している方が多いようです。
自分の過去の経験をエピソードにして、経済産業省への志望動機を作成しましょう。
経済産業省で取り組みたいこと
経済産業省のエントリーシートには「経済産業省で取り組みたいこと」という項目があります。
ここでは入省後に携わりたい業務や解決したい課題について記載します。
中小企業庁が所掌する業務に興味がある場合は関連する業務を記載しても問題ありませんが、経済産業省には資源やエネルギー政策、産業政策、産学連携など幅広い分野があるため、興味のある政策や分野をいくつかピックアップして記載するとよいでしょう。
面接対策
プレゼンテーション
経済産業省では通常の面接だけではなく、学生によるプレゼンテーションが実施されることがあるようです。
以前の内定者によれば、人生の糧になるような本を読んで、内容及び学びを5分でプレゼンするように求められたようです。
経済産業省に限らず行政官は国会議員に説明したり、国会議員の答弁を作成する機会があるため、説明力などが採点されているのでしょう。
大量の情報から重要な部分を抜き出して、概要を説明する力が重要になります。
原課面接
原課面接とは職員面接のことです。
経済産業省では採用担当による人事面接のほかに原課面接を実施しています。
原課面接とは経済産業省の現場で実際に働いている職員による面接であり、職員との政策のグループディスカッション、職員が担当している政策についての逆質問、エントリーシートの内容についての面接など職員によって形式はばらばらです。
したがって、どのような形式の面接になってもいいように準備が必要です。
経済産業省が扱う政策については広い範囲をカバーして知識を習得するとともにエントリーシートの内容については何を聞かれてもいいように準備しておきましょう。
よくある質問
中小企業庁での採用はありますか?
中小企業庁を窓口とした採用は実施されていません。
中小企業庁は経済産業省の外局であり、経済産業省に入省した後に中小企業庁に配属になる可能性があります。
したがって、中小企業庁への入庁を目的とした就職活動は行えません。
中小企業庁への配属の希望は通りますか?
経済産業省では2~3年くらいの割合で人事異動があり、多くの業務に携わる機会があります。
しかし、配属に関しては毎年、職員から配属に関する希望調書をとり、適正等を勘案して総合的に判断して決められているようです。
また、中小企業庁以外にも海外の在外公館、県庁や市役所などの自治体、被災地応援、経済産業省の関係団体あるいは民間企業等への出向・派遣もあります。
中小企業庁への入庁希望が必ずしも通るわけではないことに注意が必要です。
総合職と一般職で中小企業庁入庁の可能性は異なりますか?
一般職のほうが可能性が高いと言えます。
経済産業省に限らず、他の中央省庁においても国家総合職は「政策の企画立案等の高度の知識、技術または経験等を必要とする業務に従事する職員」と定義され、政策の企画立案を行います。
一方で国家一般職(大卒)は「主として事務処理等の定型的な業務に従事する職員」と定義され、政策の実行を行い、企画立案を支える立場になります。
中小企業庁は経済産業省の外局ですので、総合職の職員が派遣される場合はマネジメントの立場になりますが、現場の業務は一般職が実施することが多いようです。
しかし、一般職の場合は業務に関われる一方で中小企業庁のマネジメントにはなることは難しいでしょう。
まとめ
中小企業庁は中小企業を支援するための政策を総合的に推進しており、国家公務員として日本経済の発展に貢献したい人にはぴったりの省庁です。
中小企業庁は直接採用を実施していないため、経済産業省に入省する必要がありますが、適性があれば、入庁も可能です。
ぜひこの記事の内容を参考にして、経済産業省の官庁訪問に備えましょう。
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