
個人事業主の資本金とは?開業時の元入金や仕訳方法も解説
「個人事業主に資本金は必要?」「0円でも開業できるの?」と疑問に思っている方も多いのではないでしょうか。本記事では個人事業主が開業時に必要な資本金である元入金や、仕訳方法について詳しく解説します。
個人事業主に資本金は必要なのか
個人事業主として開業する場合「資本金はどうすればいいの?」と悩む方も多いかもしれません。
本章では個人事業主の資本金である「元入金(モトイレキン)」について詳しく紹介します。
法人を設立する場合は資本金、個人事業主の場合は開業時に元入金を用意する必要があります。
それぞれ設立時に必要なお金が、個人事業主は「元入金」、法人は「資本金」であると覚えておいてください。
資本金と元入金の基本的な意味は同じですが、会計上の処理が異なります。
資本金はその期の損益と区別して考えるため、毎年の金額は変わりません。
しかし元入金はその期の損益に加算して来期に持ち越すため、毎年の金額が変動します。
個人事業主の元入金について
では個人事業主の元入金とは具体的にどのようなものなのでしょうか。
ここからは元入金の必要性や、理想的な元入金の状態について解説します。
個人事業主に元入金は必要なのか
個人事業主として開業する場合「必ず元入金を用意しなければいけないのか?」と疑問に思うかもしれません。
結論から申し上げると、開業時に元入金を用意しなくても問題ありません。
つまり元入金0円でも個人事業主として開業できるのです。
もし開業資金を用意した場合でも、開業資金に関して特段手続きは不要です。
元入金はマイナスになっても問題ない
元入金はマイナスでも会計上問題ありません。
特に開業当初は事業で得た利益より、生活に使用した金額=事業主貸のほうが大きくなることもあるでしょう。
その結果元入金がマイナスになっても、会計処理上は問題ありません。
元入金の金額が増えるのが理想
元入金がマイナスになるのは問題ないものの、理想的なのは決算ごとに元入金が増えることです。
事業年度を終えて所得が増えた場合、翌期の元入金が増えるのが一般的です。
元入金が増えることは経営が安定しており、利益が大きくなっている証拠といえます。
そのため最初は元入金が少なくても、徐々に金額が増えるよう経営を続けられると良いでしょう。
元入金の計算や仕訳の方法
ここからは元入金の計算や会計処理について解説します。
開業時と決算時で処理が異なるため、これから開業する人は覚えておきましょう。
開業時
個人事業主として事業を開始する場合、開業資金は元入金勘定で会計処理を行います。
開業費は経費として処理できず、繰延資産として処理することになります。
例えば開業資金として現金50万円を事業用口座に入金し、開業費として10万円使用した場合の仕訳例は以下の通りです。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
現金預金 | 500,000 | 元入金 | 600,000 |
開業費 | 100,000 |
開業準備で用意した備品のうち、1つあたりの取得価額が10万円以上のものは開業費には含まれず固定資産になります。
この場合「固定資産」として計上され、開業費とは分けて処理する必要があるので注意しましょう。
期初に確定した元入金は、期末まで同じ金額です。
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決算時
個人事業の場合、原則として期首を1月1日、期末を12月31日に設定します。
そのため個人事業では年がまたぐタイミングで決算を行うのが一般的です。
決算時における元入金の算出・計上方法は、1年間の損益を計算し、損益と元入金を合算した上で事業主借・事業主貸と相殺する処理が必要です。
これから3ステップに分けて説明します。
ステップ1:1年間の損益計算
まずは1年間の損益を計算し、ベースとなる元入金を算出します。
ここからは以下の前提をもとに仕訳方法を紹介します。
- 売上:100万円
- 仕入:20万円
まずは売上から経費を差し引き、その年の損益を計算します。
売上と仕入の会計処理は以下の通りです。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
売上 | 1,000,000 | 損益 | 1,000,000 |
損益 | 200,000 | 仕入 | 200,000 |
売上(100万円)-仕入(20万円)で算出される利益(80万円)を元入金に計上します。
仕訳方法は以下の通りです。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
損益 | 800,000 | 元入金 | 800,000 |
ステップ2:事業主借・事業主貸との相殺
損益を元入金に計上後、事業主借・事業主貸と相殺します。
事業主借・事業主貸とは、事業用の資金とプライベート資金のやり取りを意味します。
- 事業主借:事業のための出費をプライベート資金から支払うこと
- 事業主貸:プライベートの出費を事業用資金から支払うこと
仮に事業主借と事業主貸で、以下のような場合が当期で発生したとします。
(1)事業主借:仕事で使用するPCのキーボード(1万円)を自分のプライベート資金で購入した場合
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
消耗品費 | 10,000 | 事業主借 | 10,000 |
(2)事業主貸:事業用口座からプライベート用のお金(5万円)を現金で引き出した場合
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
事業主貸 | 50,000 | 現金預金 | 50,000 |
上記の場合、事業主借・事業主貸の仕訳は以下のように行います。
※事業主借勘定の残高が1万円、事業主貸勘定の残高が5万円の場合
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
事業主借 | 10,000 | 事業主貸 | 50,000 |
元入金 | 40,000 |
ステップ3:決算時の元入金を算出
決算時の元入金は以下の計算式により求めます。
- 期首元入金+当期の利益ー事業主勘定調整
今回の例だと以下のように元入金が算出できます。
- 期首元入金(開業時の60万円)+当期の利益(80万円)ー事業主勘定調整(4万円)=136万円
このように算出された元入金が来期の期首元入金となります。
確定申告における元入金
青色申告を行う場合、確定申告時に元入金を記入する必要があります。
本章では確定申告における元入金について解説します。
元入金の金額はどこに記載するの?
個人事業主の元入金は「青色申告決算書」の「貸借対照表」に記載します。
青色申告決算書は確定申告書と一緒に提出する必要があります。
元入金を記載する時の注意点
貸借対照表上では、申告する事業年度の元入金の金額を記入する必要があるため注意が必要です。
つまり、事業主借・事業主貸と相殺する処理をする前の金額を記入します。
前章の内容を例に挙げると、貸借対照表上の元入金は、期首元入金である開業時の60万円を記載します。
実際の期末元入金は決算処理後の136万円ですが、申告書類に記載するのは期首元入金になるので注意しましょう。
確定申告の記入漏れやミスを防ぐためには、会計ソフトの利用がおすすめです。
特に青色申告は複雑な複式簿記をつける必要があり、知識がないと悩んでしまうこともあるでしょう。
会計ソフトを活用すれば、初めての方でも安心して確定申告を進められます。
個人事業主の元入金についてよくある質問
個人事業主の元入金に関してよくある質問をまとめてみました。
これから個人事業主として開業する方はぜひ参考にしてください。
個人事業主の資本金の平均はいくらですか?
個人事業主は法人設立時と異なり、資本金を用意しなければならないわけではありません。
ただし多くの場合、個人事業主でも資本金のように開業資金を用意しています。
一般的に個人事業主は開業資金として、50~100万円を用意するケースが多いようです。
開業準備にかかった費用は「開業費」となり、繰延資産として会計処理を行います。
取得金額が10万円以上の備品は固定資産として処理します。
元入金ゼロでも開業できますか?
個人事業主の元入金にルールは存在しないため、0円でも開業可能です。
元入金は毎年プラスになるのが事業的には理想ですが、マイナスになっても会計処理上は問題ありません。
個人事業主の元入金の仕訳は会計ソフトを使おう
本記事では個人事業主の資本金=元入金の概要や計算・仕訳方法について紹介しました。
元入金は開業時と決算時にそれぞれ会計処理が必要です。また青色申告時には貸借対照表に記載する必要がありますが、金額を間違えやすいので注意しましょう。
元入金の仕訳は複雑で、簿記の知識がない場合は苦労することも多いかもしれません。
青色申告をスムーズに行うためにも、会計ソフトを導入しましょう。
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