
退職金の平均相場を勤続年数別に紹介|気になる計算方法も解説
就職するときは毎月の給与や賞与の他に、退職金も気になるところです。この記事では、退職金制度の仕組みや勤続年数による退職金の相場について分りやすく解説しています。
退職金の制度の仕組みとは
退職金制度は法律に定められた会社の義務ではありませんが、7割以上の会社が設けています。
ここでは退職金制度の仕組みの概要について説明します。
退職金とは
退職金とは会社を退職するときに支払われるお金です。
会社が退職金制度を設けるかどうかは任意となっています。
就業規則や労働契約に退職金制度が設けられている場合は、退職金は会社が支払う義務のある「賃金」に該当すると見なされます。
会社に退職金制度がない場合でも「慰労金」として退職時にお金が支払われることがあります。
しかし、退職する人がそれを請求することはできません。
退職金は定年退職のときだけでなく、中途退職のときも勤続年数に応じて支払われます。
中途退職の場合は自己都合で退職するのか会社都合かによって金額が違います。
懲戒解雇の場合は、退職金は支払われないのが一般的ですが、懲戒の内容によって一部が支払われるケースもあります。
退職一時金制度とは
退職金には、退職時に一時に支払われる「退職一時金制度」と毎年年金として支払われる「企業年金制度」があります。
一時金と年金を組み合わせる併用型もあります。
大企業では併用型が約85%ですが、中小企業では一時金制度だけという会社が8割近くを占めます。
「退職金」と「退職共済金」の違いとは
退職金はそのときの景気の動向や企業成績に関わりなく、規約に定めらた金額を払う必要があります。
そのために中小企業の約半数が加入しているのが、国の独立機関が運営する「中小企業退職金共済」です。
企業は共済金を積み立てることで景気に左右されずに退職金を支払うことができ、従業員にとっても大きな安心材料になります。
「退職共済金」は会社からではなく共済機構から支払われます。
広い意味ではこれも退職金ですが、会社が社内準備から支払う「退職金」とは支払い窓口が違います。
退職金の平均相場
大卒者の退職金の平均相場を、東京都の中小企業(従業員10人~299人)を例に見てみましょう。
データは東京都産業労働局の「中小企業の賃金・退職金事情(平成30年版)」に基づいています。
勤続1年~15年の退職金の平均相場
■ 【大卒者・中小企業】
勤続年数 | 自己都合による退職 | 会社都合による退職 |
1年 | 9万円 | 16万円 |
3年 | 24万円 | 38万円 |
5年 | 44万円 | 64万円 |
10年 | 122万円 | 157万円 |
15年 | 230万円 | 284万円 |
退職金が勤続何年目から支払われるかは会社の規定によって違います。
しかし、3年以上としている会社が約半数で、5年以上ではほぼすべての会社が支払っています。
「会社都合」とはリストラ、労働者に重大な理由がない解雇、辞職勧告などで退職した場合で、自己都合による退職より退職金の額が多くなります。
従業員1,000人以上の大企業の相場は、自己都合の場合、勤続10年~15年で190万円~430万円ほどです。
勤続20年~30年の退職金の平均相場
■ 【大卒者・中小企業】
勤続年数 | 自己都合による退職 | 会社都合による退職 |
20年 | 378万円 | 436万円 |
25年 | 570万円 | 636万円 |
30年 | 785万円 | 852万円 |
勤続25年では自己都合による退職でも500万円を超えています。
一般的に退職金は20年、25年などの節目を迎えると計算基準が上がり、高くなるように決められています。
大企業の相場は勤続30年で1,970万円ほどです。
そのため、中小企業の相場785万円とは、1,200万円ほどの開きが生じています。
勤続33年~定年の退職金の平均相場
■ 【大卒者・中小企業】
勤続年数 | 自己都合による退職 | 会社都合による退職 |
33年 | 929万円 | 1,008万円 |
定年 | ー | 1,203万円 |
中小企業、大企業を含めた、勤続35年以上の定年の退職金は1,997万円(2018年厚生労働省調べ)です。
東京都の中小企業の相場と800万円ほどの差があります。
国家公務員の退職金の相場
■ 【国家公務員 常勤職員】
勤続年数 | 自己都合による退職 | その他(死亡による退職など) |
5年未満 | 23万円 | 97万円 |
5~9年 | 89万円 | 335万円 |
10~14年 | 270万円 | 540万円 |
15~19年 | 524万円 | 767万円 |
20~24年 | 913万円 | 1,301万円 |
25~29年 | 1,354万円 | 1,634万円 |
30~34年 | 1,704万円 | 2,508万円 |
35~39年 | 1,996万円 | 3,680万円 |
40年以上 | 2,165万円 | 3,554万円 |
引用元 : 「平成29年退職者の退職手当支給状況|内閣官房人事局」
上表の金額は高卒、大卒を含めた平成29年退職者の平均額です。
公務員の場合は「会社都合による退職」はないので、「その他」の理由は死亡退職がほとんどです。
国家公務員の退職金は民間の中小企業よりは高く、ほぼ大企業並みになっています。
退職金には税金と計算方法
退職金にも税金がかかりますが、老後の生活資金ということを考慮して、給与所得にかかる税金よりは低率になっています。
退職所得控除とは
給与にかかる所得税に「給与所得控除」があるように、退職金にかかる税金には「退職所得控除」があり、控除額を超えた分にだけ税金が課せられます。
退職所得控除額は次の通りです。
勤続20年以下 | 40万円×勤続年数 |
勤続20年超 | 800万円+70万円×(勤続年数-20年) |
退職所得控除の計算方法
例えば、勤続10年の場合は、40万円×10年=400万円で、退職金の内400万円は非課税です。
控除額が大きいので多くの場合、中途退職の退職金には税金がかかりません。
勤続35年の場合は、800万円+70万円×(35年-20年)=1,850万円で、退職金の内1,850万円は非課税です。
退職金の相場から見ると非課税枠が非常に大きいことが分ります。
実際の税額は、控除額を超えた分の2分の1の金額に一定の税率を掛けて計算します。
税率は金額に応じて5%~45%まで9段階があります。このときにも一定の控除額があります。
企業によっては退職金制度がない?
退職金制度を設けるかどうかは企業が自由に決めることができるので、企業によっては退職金制度がない場合があります。
平成30年の東京都産業労働局の調べでは、従業員10人~299人の都内中小企業の71.3%に退職金制度があります。
企業規模が大きくなるほど退職金制度を設ける会社の割合が増え、従業員1,000人以上の企業では93%に退職金制度があります。
退職金の受け取りのタイミングと注意点
退職金は退職した日から1~2ヶ月後に振り込まれるのが一般的です。
退職金制度がある会社では、就業規則などに退職金の支払時期について明記されているので確認しておきましょう。
定められた時までに退職金が支払われないときは、まず会社に問い合わせましょう。
そして、それでも支払われないときは労働基準監督署や弁護士に相談しましょう。
退職金の請求権の時効は5年なので、それを過ぎてしまわないように注意しましょう。
まとめ
日本では7割以上の会社が退職金制度を設けていますが、退職金の金額は企業規模と勤続年数によって大きな違いがあります。
退職金にかかる税金は控除枠が大きく、給与所得よりも優遇されています。
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