
【懲戒処分の通知方法】注意点や必要なものについて詳しく解説
雇用主として、どうしても従業員に対して「懲戒通知」を出さないといけないことがあるかもしれません。しかし、従業員の人生を左右する大きな処分であるため、通知方法や書類についてもしっかりとした判断が必要です。この記事では懲戒通知を出す方法や考慮すべきことについて説明します。
懲戒処分の通知方法は原則的に書面通知
「懲戒処分」とは、従業員・職員が果たすべき義務や、規律に違反した者に対する制裁処分のことです。懲戒免職・停職・減給・戒告などがこれに該当します。
刑法で定める刑罰とは異なります。公務員は国家公務員法・地方公務員法で「懲戒処分」の規定があります。
「懲戒処分」は公務員が職務上の義務に違反・職務を怠ると科せられます。
国家公務員法・地方公務員法で規定されている免職・停職・減給・戒告の重い処分があります。また、軽い処分の訓告・厳重注意もあります。
就業規則に記載がなければ口頭も可能
「懲戒処分」は就業先の就業規則に記載されていないときは、口頭で通告することができるようです。
懲戒処分の通知方法は、就業先が従業員に対する一方的な通知です。
そのため書面ではなく、口頭で行うことも可能であるのが民法上の解釈になるようです。民法には懲戒処分の通知方法を書面で行うルールはありません。
就業先の就業規則の規定で「懲戒処分は書面で通知する」というものがなければ、口頭でも行うことは可能なようです。
書面通知により処分内容と理由を明確化できる
「懲戒処分」は書面による通知で、処分内容と理由を明確化できます。
事業所は従業員に対して、懲戒処分を通告するときの実務は書面で行いましょう。書面での通告により懲戒の内容を明確にして、該当の問題行動は組織では許されないという、事業所の強い意思を示します。
譴責(けんせき=一番軽い懲戒処分で始末書を提出して戒めること)での懲戒処分は、改善の機会を与えます。
書面で通知し詳細に説明を行うことで、将来的に再発や争議を防ぐ効果も持つようです。
対象者が弁護士に相談する際は書面通知を求められる
懲戒処分の対象者が、弁護士や争議の専門家に相談したときには通知書類を求められるようです。
懲戒処分通知を受けた従業員が弁護士・争議専門の合同労働組合などの外部機関に相談したときは、相談を受けた側は通知書類の有無や内容を必ず確認します。
相談を受ける側は懲戒処分のエビデンスがないと、事業所との交渉ができないからです。
通知書の受け取り拒否の場合は内容証明書で郵送
事業所から送付された、懲戒処分通知書の受け取りを拒むときは、内容証明書郵便を使用します。
懲戒処分の通知書の受け取りを拒否されたときは、懲戒に至る経緯や懲戒処分の通知をした履歴を残すために、内容証明郵便を使用して郵送するようです。
懲戒処分の通知書作成の際の注意点
懲戒処分の通知書作成を作成するときの注意点を紹介します。
事業所の人事担当部門は、就業規則に違反がある従業員に対して懲戒処分通知書を作成することがあります。
懲戒処分は従業員の将来を左右する繊細で重要な決定事項になります。
懲戒処分を受けた従業員が離職して再就職するときに履歴書に懲戒処分を記載する必要があります。
法務部や弁護士に相談する
懲戒処分の通知書作成のときは、事業所の法務部門や社外の労務関連弁護士にアドバイスを受けてドラフトを作成することをお勧めします。
記載方法は裁判に至ったときに第三者の観点で事実確認が容易にできる内容を書面で残しておく必要があるようです。
懲戒処分に至った経緯を含め記録に残す
懲戒処分に至った経緯を含めて記録に残す必要があります。
事業所側の一方的・主観的判断ではなく、客観的にみて懲戒対象者の処分が適正である証明することです。
問題を起こした従業員に対して指導をしたにも関わらず改善されなかった経緯も含め記録に残すことが重要です。
多様なケースに対応する、複数の懲戒処分通知書を準備すると良いでしょう。
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就業規定には懲戒規定及び通知方法の記載が必要
事業所の就業規則には「懲戒処分の規定」と「通知方法」を掲載する必要があります。
事業所の就業規則作成においては法務担当部門・人事担当部門・社労士・弁護士・労働局などの関係者が関与するので漏れがないように注意しましょう。
万一失踪した従業員への懲戒解雇の通知を行う際は、家族や届出住所に郵送する規定の記載が有効なようです。
就業規則に規定しておくことで、従業員が通知を知り得たことにもなり、事業所を争議から守ることになるようです。
対象者が失踪する場合がある
懲戒処分対象者が失踪するケースがあるようです。
例えば、多額の借入金をして返済できないときに失踪するケースや、事業所に公金を着服してそのまま失踪するケースが散見されます。
事象が発覚したときには対象者が行方不明の状況で「懲戒処分」を通知することがあるようです。
懲戒処分の手続きの違法性を巡る裁判を避けられる
懲戒処分対象者が処分の手続きから逃れるケースがあるようです。
事業所は懲戒処分の通知をするときに、対象者が弁明をする機会を与えずに一方的に懲戒処分をすると、裁判判決で違法な手続きとされて「懲戒処分」が無効になるケースがあるようです。
従業員に懲戒処分を通知するときは、不利益な通知を受ける以上、従業員の反発も予想されるので、事業所は感情的な表現を避けて誤解を招かないため、断定的な表現にならないよう留意することが良いとされています。
就業規定に盛り込むべき懲戒規定
就業規則に懲戒処分の規定を掲載しましょう。
懲戒処分は企業秩序違反者に対し事業所が行使する特別の制裁罰になります。制裁罰を履行するためには、その事由と手段を就業規則に明記しておくことが必要なようです。
特に「懲戒解雇」「懲戒免職」対象者には、一般的に退職金が支給されません。
就業規則に「懲戒解雇」「懲戒免職」に該当するとき、退職金は不支給あることを明記しておくことが大切です。
懲戒処分の通知をする前に考慮する点とは
事業所が行使する従業員に対する懲戒処分は、従業員の企業秩序違反行為に対する「制裁罰」になります。
懲戒処分は事業所の完全な自由裁量で行使できず、従業員保護の観点からの法規制に及んでいることに留意し適切・効果的に行使する必要があるようです。
対象者に弁明の機会を与える
懲戒処分対象者に弁明の機会を与えることが必要です。
裁判では、被告人に弁護人がつき、反論をする機会が与えられていることと同様です。事業所は従業員を懲戒処分にする前に必ず本人の弁明を聞く機会を設ける必要があります。
対象者の弁明の機会を付与しているか否かは懲戒処分の有効性が争議に至ったときに必ず問題になりますので注意することが必要なようです。
懲戒処分の重度の適正な審査を行う
懲戒処分に科す重度か適正な審査を行うことが大切です。
懲戒処分は対象者の将来に影響を与える重大な「制裁罰」になるからです。再就職のときの弊害・障害となり採用されないケースがあるようです。
そのため事業所が従業員を懲戒する権利を有しても、いわゆる懲戒権濫用法理と呼ばれるものがあり、懲戒処分は懲戒事由があっても、その行為の性質・態様・被処分者の勤務歴に照らして相当な程度で行使します。
つまり、当該の懲戒処分は「重きに失しないか」とのことを審査することが求められるようです。
まとめ
懲戒処分に科されることは、事業所に重大な迷惑を掛けたことが要因です。
金銭に関する事案・殺傷事案・交通事故事案・業務妨害事案などの想定外な悪事によるものです。普通に勤務をしていれば科されない処分です。
しかし、事業所は想定外の事案を扱うことがあります。懲戒処分は対象者の将来に大きな影響があることを前提に行使する必要があります。
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約90%の質問に回答が寄せられています。
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