
【固定残業代と最低賃金について】計算方法などご紹介していきます
残業代を減らす対策として浸透しつつあるのが、固定残業代です。今回は固定残業代と最低賃金の関係に焦点を当て、固定残業代や給与が最低賃金を下回る場合の対応や計算の仕方などについて詳しくご紹介していきますので、是非参考にしてみてください。
固定残業代と最低賃金について
コスト削減はどの企業でも課題であり、人件費の削減や圧縮に取り組んでいます。
中でも残業代は社員の労働時間に左右され、人件費の中でも流動的です。
そこで人件費をより的確に把握しつつ、残業代を減らす対策として浸透しつつあるのが、固定残業代です。
固定残業代は人件費の把握や削減など、経営上のメリットが注目されやすい一方で、ブラック企業が固定残業代制を導入して、違法に給与削減している問題も取り沙汰されています。
自分の会社の固定残業代が合法なのか、それとも違法なのかを見分けるためにも、今回は固定残業代について詳しく解説します。
また、固定残業代と最低賃金との関係や、給料が最低賃金を下回る場合の対応方法などもご紹介します。
固定残業代とは?
固定残業代とは、毎月一定時間分の残業代をあらかじめ給与に組み込む制度です。
残業代は本来、残業した時間数に応じて残業手当が支給されますが、毎月の残業代が固定されていることから、固定残業代いう名称がつきました。
注意しておきたいのが、固定残業代は残業代の上限を決めるものではない、という点です。
固定残業代であらかじめ設定された一定時間の残業時間を超えた場合は、超過した分の残業代は別途支払われます。
最低賃金とは?
最低賃金とは、「最低賃金法」にもとづいて最低額の賃金を保障することで、働く人の生活の安定や労働力の質の向上を目指す賃金制度です。
最低賃金は地域別(都道府県別)あるいは業種別に国が定めています。
都内の最低賃金はいくら?
東京都の最低賃金は、1時間あたり1,072円です。(2023年3月1日現在)
この最低賃金額は2022年10月1日に発効したもので、最低賃金が改正されればその都度、東京労働局が発表します。
また、全国の地域別最低賃金は、厚生労働省ホームページでも公表しています。
(参考:地域別最低賃金の全国一覧 - 厚生労働省)
内定先が最低賃金以下なのですが転職希望先に質問しても大丈夫ですか?
内定をいただきましたが、基本給から計算してみると最低賃金以下の金額になりました。 (前職で給与計算を担当しておりましたので間違いはないかと思います)
職務の内容などは希望と合致しているので悩んでいます。
この件について内定をいただいた企業に質問してもいいものなのでしょうか?
納得していないなら…続きを見る
最低賃金の計算方法について
自身の給与が最低賃金を上回っているか確認するためには、支給された給料をもとに算出する必要があります。
ここでは主な賃金形態ごとの算出方法をご紹介します。
基本給と最低賃金を比較する
基本給が以下の計算方法に当てはまる場合、最低賃金以上の額が支給されていることが確認できます。
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時給制
時間給≧最低賃金額(時間額)
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日給制
日給÷1日の所定労働時間≧最低賃金額(時間額)
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月給制
月給÷1か月の平均所定労働時間≧最低賃金額(時間額)
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出来高制・請負制
賃金の総額÷賃金計算期間の総労働時間≧最低賃金額(時間額)
計算方法の詳細は、厚生労働省ホームページを参照してください。
(参考:最低賃金額以上かどうかを確認する方法|厚生労働省)
固定残業代と最低賃金を比較する
給与に固定残業代が含まれる場合は、固定残業代を除いた基本給が最低賃金を上回っていれば、合法とみなされます。
固定残業代を差し引いた基本給が最低賃金以上であることを確認する方法は、以下のとおりです。
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基本給を算出する。
1か月の給与の総額-各種手当=基本給
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基本給から固定残業代を除く。
基本給-固定残業代=(A)
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(A)を所定労働時間で割る。
(A)÷1か月の所定労働時間=(B)
- 「(B)≧地域の最低賃金額」であれば、合法である。
固定残業代や基本給が最低賃金を下回ると?
もしも固定残業代や基本給が最低賃金を下回っていたら、差額の残業代や給料を会社に請求できるか気になるところです。
ここからは、差額の請求可否について確認しておきましょう。
基本給が最低賃金を下回ることは当然違法になる
基本給を時間額に換算した金額が最低賃金を下回っている場合、最低賃金法違反にあたります。
会社は基本給と最低賃金の差額を未払い賃金として、従業員に対して支払わなければなりません。
また、差額が支払われない時は、会社に対して未払い賃金の請求を行うことができます。
固定残業代が最低賃金を下回っても違法になる
基本給と同様に固定残業代が最低賃金を下回ると、最低賃金法違反に該当します。
最低賃金を下回った分は、未払い残業代として会社に請求することが可能です。
自分の給与が最低賃金を下回っているか確認するには?
ここまでで、基本給や固定残業代が最低賃金を下回っていれば、最低賃金との差額を請求することができる、という点をご理解いただけたかと思います。
では、会社から支払われる給与が最低賃金より高いのか、それとも低いのかはどうやって確認すれば良いのでしょうか。
雇用契約書と就業規則を確認する
給与が最低賃金を下回っているかどうかは、雇用契約書と就業規則を確認すればわかります。
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雇用契約書を確認する場合
雇用契約書とは、雇用主と被雇用者の双方が合意のうえで締結する契約書です。
雇用契約書には、賃金の計算方法が記載されていますので、該当箇所を確認してみましょう。
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就業規則を確認する場合
就業規則には、給与規程(もしくは賃金規程)が必ず記載されています。
企業は労働基準法に則り、給与規程を「絶対的記載事項」として就業規則に明記する義務があります。
絶対的記載事項には、下記を記載します。
- 賃金構成(基本給・手当・割増賃金)や賃金の計算方法
- 給与の支払時期、支払方法
- 賃金の集計期間
- 昇給の基準や時期
就業規則の給与規程に、基本給や固定残業代の計算方法が記載されていますので、それらを最低賃金と照合して、最低賃金を下回っていないか確認してください。
下回っている場合は会社に相談する
先ほどもご説明したとおり、給与から時給換算した金額が最低賃金を下回っていることが判明したら、最低賃金との差額は未払い賃金・残業代として会社に請求することが可能です。
その場合は、まずは会社に相談して、最低賃金との差額を支払ってもらうよう話し合いましょう。
会社に相談しづらければ、労働基準監督署で相談することもできます。
万が一、会社が未払い分の支払いを拒否した場合は労働賃金法違反にあたり、会社に対して罰則規定が科せられます。
なお、最低賃金との差額の請求は、給与支給日より2年まで遡ることが可能です。
2年以上が経過したものについては、請求ができませんのでご注意ください。
まとめ
今回は固定残業代と最低賃金の関係に焦点を当て、固定残業代や給与が最低賃金を下回る場合の対応などについて、ご紹介しました。
固定残業代は流動的な残業代を固定化することで、人件費が把握しやすくなるだけでなく、残業代の削減も可能になるため、経営上のメリットがあると言われています。
ところがブラック企業と言われる会社で固定残業代制を悪用して、従業員に不当に残業させたり、本来支給すべき残業代を支払わなかったりするケースも発生しているのが現状です。
固定残業代制や最低賃金について正しく理解して、労働の対価として適正な給与額を受け取っているかを、あらためて確認しておきましょう。
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約90%の質問に回答が寄せられています。
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