
【懲戒処分と出勤停止】具体的な内容や法律上の扱いについて解説
会社の指示に従わなかった場合、懲戒処分を下されて自宅謹慎を言い渡されることもあります。その間はもちろん賃金が支払われないため、重い処分ということができます。この記事では、自宅謹慎はどのくらいの長さなのか、その間にアルバイトをしても良いのかについて解説していきます。
出勤停止は懲戒処分の中では中程度
多くの会社が毎年、定年者も含めて一定数の人が退職し、同等数の人が入社してきます。
入社される社員には入社直後に導入教育で会社の規則を教わり、昇進や降格に関わることが教育されるのが一般的に行われていることだと思います。
しかし会社生活が慣れてきて、協力会社との付き合いも始まってくると、脇が甘くなって会社の規則に反することを犯してしまう社員も出てきます。
会社規則に反する行為が発覚した場合に、会社は再発防止のために制裁、いわゆる「懲戒処分」を用意しております。
今回の記事では、まず懲戒処分について説明したあとに、懲戒処分の中の一つである「出勤停止」について詳しく説明いたします。
それでは最初に、懲戒処分についてどのような種類があってどのようなものかについて、ご説明してまいります。
懲戒処分の種類
懲戒処分は制裁ですので、会社の反することであって、それに対する制裁は何かを明文化し、事前に社員全体に通達される必要があります。
その内容が明文化されているのが就業規則であり、入社時に教育され、また随時更新されて回覧できるように、社内のイントラネットで見ることができるのが一般的です。
通常、懲戒処分は会社規則に7種の懲戒処分が明文化されていると思います。
処分の軽い順から、
- 戒告(かいこく)
- 譴責(けんせき)
- 減給
- 出勤停止
- 降格
- 諭旨(ゆし)解雇
- 懲戒解雇
となります。
最も重い懲戒解雇については、みなさん聞いたことがあるのではないでしょうか。例えば、社員がお金の使い込みなどの犯罪を起こした時などで聞かれます。もちろん、あくまでも会社が制定する規則ですので、7種以外の懲戒処分も考えられます。
それでは次に懲戒処分の内容について説明いたします。
懲戒処分の内容
まず「戒告」、「譴責」は軽い罰則です。
規則に反した行為を行った人が管理責任者に呼び出され、口頭による注意で再発防止を図ります。戒告と譴責の違いは、譴責の場合は通常始末書の提出が要求されます。
次に減給ですが、これは経営者の給与カットと従業員が懲戒処分で減給を受ける場合では違ったものになります。減給される金額は法律で最大減給費用が決められており、それも1回だけの減給になります。
出勤停止はその名の通りですが、これについては詳しく後述します。
降格は役職の降格を指します。具体的には部長が課長になるような場合ですが、特別な場合に基本給が降格する場合があります。
諭旨解雇は基本的に最も重い懲戒解雇と同等なことを犯したことによる処分です。しかし一方的に企業側が従業員を解雇するのではなく、従業員が解雇に同意するといった処分です。退職金が出る場合が多く、懲戒解雇と扱いが大きく違います。
懲戒解雇は最も重く会社が一方的に従業員を解雇する処分です。履歴書の賞罰欄への記載や離職票に「重責解雇」と記録されているため、次の再就職時に支障が生じる可能性があると思います。
懲戒処分による出勤停止とはどのような状態なのか
それでは「出勤停止」処分とはどのような罰則なのかについて説明いたします。
出勤停止は基本的に無給
具体的な例で説明いたします。
製造部署の社員が知人にお金をもらって依頼されて社内の工具などを使って部品を作ってアルバイトをしていたことが発覚したので、就業規則に照らし合わせて2週間の出勤停止を命じたとします。
この場合、2週間分の賃金は支払われないのが一般的です。また、出勤停止期間中は勤続年数にもカウントされないため、賞与や退職金などにも影響を及ぼします。
出勤停止と自宅待機の相違点
自宅待機は懲戒処分ではありませんが、懲戒処分内容を決めるために一定期間調査が必要になる場合、会社は対象者に自宅待機を命じることが可能です。
自宅待機は会社の業務命令ですので、待機中の賃金は支払われます。また自宅期間は調査完了までであり、調査完了後に懲戒処分内容が決定されます。
懲戒処分による出勤停止の期間
法律では出勤停止期間を定めておりません。
但し、前項にも記載しましたが出勤停止は賃金の支払いはされないので、異常に出勤停止長いと生活に支障をきたします。
出勤停止の期間は1週間から長くて1ヶ月
出勤停止の理由は会社の規則に反したことを犯したことであるので、あまりにも短すぎても罰としての意味がなくなってしまいます。そのため、一般的には1週間から2週間と言われております。
1ヶ月の出勤停止になると、1ヶ月の給料が全くなく賞与にも影響がでるため、非常に大きな痛手を従業員に与えます。
1ヶ月が出勤停止の限度と思われ、1ヶ月を超える出勤停止は諭旨解雇等のより厳しい懲戒処分を検討したほうがよいかもしれません。
出勤停止期間の法律上の取り扱い
法律によって懲戒処分は定めておりません。従って、出勤停止期間は就業規則に照らし合わせて決めることになります。
一般的には就業規則に出勤停止期間を記載する場合「原則として○日間を限度として出勤を停止し、その間の賃金は支給しない」のような抽象的な書き方になります。
異常に出勤停止期間が長いと、懲戒処分を受けた社員がインターネットに情報を流してしまい、会社がネットで炎上してしまうリスクがあります。
出勤停止期間は、犯した問題のレベルによって世間の一般常識と照らし合わせ、問題がないように配慮する必要があると思います。
出勤停止のとき自宅謹慎を強要できない
次に、出勤停止中の社員への制限について説明します。
例えば、会社の人事担当が問題を犯した社員を訪問したとします。彼がその自宅謹慎期間にアルバイトに出ていた場合、会社はどのような対応を取ることができるのでしょうか。
つまり、会社は出勤停止中である社員を自宅謹慎させるような、社員の行動を制限することはできるのでしょか。
私生活の制限は不可能
出勤停止は労働することを禁止して賃金の支払いを行わないことを行う制裁です。
自宅謹慎まで強要するような、基本的人権である「人身の自由」(憲法18条)に関わる制限を加えることはできません。
したがって、例のように自宅で謹慎せずに外出することまでは制限することはできません。ただし、アルバイトをしてよいかについては別の話しになります。
兼業は禁止できるが就業規則に記載する必要あり
出勤停止中のアルバイトは就業規則で副業を禁止することで制限することができます。
もし副業を禁止しておれば、例のケースの場合は、出勤停止以上に重い懲戒処分にできる可能性もあります。
懲戒処分の出勤停止と業務命令の出勤停止の違い
出勤停止は、懲戒処分の場合と業務命令による場合があります。
懲戒処分による出勤停止は、出勤停止中の賃金は支払われませんが、制裁が解けて出勤停止解除後は通常業務に戻れますので賃金の支払いが開始されます。
業務命令による出勤停止は、懲戒処分を決めるための調査期間であり、会社による指示であるため出勤停止中も賃金は支払われます。
ただし、出勤停止後は懲戒処分が決定されておりますので、通常業務に戻れず懲戒処分を受けることになります。
まとめ
今回の記事では、まず懲戒処分について説明したあとに、懲戒処分の中の一つである「出勤停止」について細かく説明してきました。
出勤停止処分は、停止中の賃金も停止しますし、勤務日数も停止しますので、おそらく賞与や退職金にも影響を与えます。
たとえ出勤停止処分を決定したとしても期間については慎重に判断してください。もしご本人や親族、友人が人事部門の方で、社員の懲戒処分で悩んでいる方がいるならば参考にしてみてください。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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