
【試用期間の残業は合法なのか】違法な残業への対処法など解説
試用期間の残業は感覚的には違法なのではと感じてしまう方も多いかもしれませんが、実際には試用期間の残業は違法性はありません。しかし、試用期間であることをいいことにして、違法な残業を迫られることもあるかもしれません。試用期間の違法な残業にはどのように対処すればいいのでしょうか。今回は試用期間の残業について解説します。
試用期間の残業は合法なのか違法なのか
試用期間とは、一定期間、その労働者の働きぶりを見て、正式に従業員として採用するかどうかを決定するための期間のことをいいます。
では、この試用期間の間に残業があることは問題ないのでしょうか、それとも違法なのでしょうか。
試用期間でも残業は禁止ではない
試用期間での残業は感覚的に問題があるかのように感じるかもしれませんが、結論から申し上げますと、試用期間であっても、残業は問題ありません。
法律上にも、試用期間内に残業をしてはいけないなどの制限は特に設けられていません。
そのため、試用期間中に残業をしてしまっても問題はないといえます。
残業代は全額支払われる
働く職場によっては、試用期間であっても残業を求められることもあります。
ただ、このように残業を求めた場合は、労働者に対し、残業代となる時間外割増手当や深夜割増手当などの割増賃金を満額で支払う義務があります。
これは労働基準法によって定められています。
ちなみにこの割増賃金の最低ラインも、労働基準法では定められています。
8時間を超える時間外労働の場合は、午後10時から翌日の午前5時までの深夜においては時間給の125%以上の割増賃金を支払うことが決められているのです。
試用期間の休日出勤は法律上は問題ないのか
試用期間でも残業を求められることはあり、割増賃金が支払われることはお話した通りです。
では、休日出勤についてはどうなのかというと、試用期間中でも休日出勤を求められる場合はあります。
そして、こちらも同様に違法にはなりません。
そしてこちらも、休日に労働を行ったということで、時間給の135%を受け取ることができますし、割増条件が重複した場合は、その割増料金も受け取ることができます。
残業は断ることができるのか
試用期間に残業を求められた場合、大事な用事などがある時などは断りたくなるものです。
けれど、断って雇ってもらえなくなったらどうしようなど、不安にもなるでしょう。
結論からお伝えすると、雇い主との間に36協定という「会社とあなたとの間で残業を可能にするための約束」を結んでいる場合は、原則として残業を断ることはできません。
36協定とは
36協定とは、労働者と会社との間で、残業をすることを可能とする目的で締結された協定のことをいいます。
この協定を締結していないと「1日8時間、1週間に40時間」を超える範囲で従業員を残業させることは違法になってしまいます。
また、この36協定を締結するだけではなく、加えて就業規則において残業命令に関して規定しておかなければ、会社としては従業員に残業を命令して従わせることはできないことになっています。
つまり、この2つの条件が満たされている場合は、正当な理由がない限り、残業を断ることはできないのです。
残業を断るための具体的理由
では、以上のような2つの条件が満たされている場合でも、残業を断ることができる「正当な理由」とは、どのようなものが当てはまるのでしょうか。
具体的には、以下のような5つが挙げられます。
- 体調が悪い場合
- 現在妊娠中である、または出産からまだ1年が経過していない
- 小さな子供の世話や高齢者の介護のため、残業をせずに帰宅したい
- 月100時間ほどの尋常ではない残業時間が日常的に強いられている
- 残業をしても、その残業代が支払われていない
このうちの、どれか1つにでも当てはまれば、上記の2つの条件が満たされている場合であっても、残業を断ることができます。
違法な残業への対処法
では、違法な残業を求められた場合の対処法には、どのようなものがあるのでしょうか。
ちなみに違法な残業とは、残業をしても残業代が出ない、そもそも36協定が締結されていない、36協定は締結されていても月100時間を超える尋常ではない長時間残業が続いているような状態を指します。
弁護士に依頼する
会社から求められる違法な残業に従いたくはないと感じる場合は、そのような職場を退職し、違法な長時間残業やザービス残業がない会社へ転職するというのが、抜本的な解決法になります。
そして弁護士にこれまでの違法な残業について相談をすることで、未払いとなっている残業代を取り返すこともできます。
たかが残業代だと思っていても、計算すると高額になることも多いです。
月給20万円のお仕事だったとして、1ヶ月の平均の所定労働時間が170時間だったとします。
そして、月100時間の残業を強いられていたとしましょう。
先ほどの残業代の計算方法に当てはめると
(20万円÷170時間)×1.25倍×100時間=14万7000円
これが、本来貰えるべき1ヵ月の残業代です。そして、残業代は2年前までさかのぼって請求することが可能なので、2年分の残業代を計算すると
14万7000円×24ヶ月=352万8000円
こんなにも高額な残業代が支払われておらず、そしてこれから請求できることになるのです。
同じ弁護士でも、完全成功報酬制の弁護士に依頼をすれば、初期費用を払わずに残業代を請求することが可能です。
弁護士に依頼をすれば、時間も手間も、精神的な負担もかけずに未払いの残業代を請求することができます。
自分ひとりで請求するよりも確実に回収できますので、検討してみてはいかがでしょうか。
労働基準監督署へ報告する
労働者の残業があまりにも長時間に及ぶ違法なものであったり、サービス残業を強制されていたりするような場合は、労働基準監督署に相談できます。
労働基準監督署とは、労働基準法に沿って会社を監督または指導する行政機関のことです。
労働基準監督署に相談をすれば、労働基準監督署の署員が、以下の3つのような行動を起こしてくれます。
- 問題のある会社に直接訪問し、調査をする
- 違法行為が認められた場合は是正勧告をする
- 繰り返し是正勧告に従わない場合や、悪質な場合は、逮捕をする
とはいっても、実は労働基準監督署は慢性的に人員不足の状態が続いています。
そのため、「過労死」「危険作業」「労働災害」といったような生命に関わる案件を優先にしてしまいがちで、「サービス残業」や「長時間残業」といったような案件では動いてくれないことも多いのです。
ですから、もしも労働基準監督署に相談をしても解決できそうにない場合は、弁護士などの他の解決策を行うことをおすすめします。
まとめ
試用期間の残業について、どのように残業というものが扱われているのか、違法な場合はどう対処すればいいのかという点についてまとめました。
労働基準監督署や弁護士に頼って残業代を請求できることが知らない人は意外と多いです。
請求できる権利があるものですので、きちんと請求をしましょう。
残業をした日にちや時間などの記録を残しておくといいでしょう。
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