
生理休暇は取りにくい?利用率1割の理由には名称と出世が関係?
Job総研は会社員828人を対象に「2023年 生理休暇の実態調査」を実施しました。同調査をもとに、生理休暇と女性の働きやすさや出世への関係性の実態・対策を考察していきます。
そもそも生理休暇を取得する以前に、体調不良による休暇は取りにくいのでしょうか。休暇を取得しづらい場合、何か原因があるのかもしれません。また生理時の体調と出世の関係性についても考察していきます。
生理で悩む女性や企業に求められる対策を、調査の中でいただいたコメントとともにご紹介します。
そもそも体調不良による休暇は取りにくいのか?
そもそも体調不良による休暇を取りにくいと感じる人は多いのでしょうか。
Job総研の「2023年 生理休暇の実態調査」における「体調不良での休暇の取りやすさは、性別で差があると感じますか?」という問いに対して、差が「あると思う」の回答が半数ということがわかりました。
またJobQに寄せられた回答についても、一部のコメントをご紹介します。
【Job総研/公式】体調不良による休暇の取りやすさ、性別で差があると感じる?
差があると感じる理由、差がないと感じる理由、 どちらでも構いませんので具体的なエピソードと併せて教えてください!
生理休暇に対し、生理の軽い女性やそうではなくても自身が生理休暇を使っていない女性の方がいい印象を持っていないイメージ。
以前の職場で…続きを見る
感じないです。有休なら理由は必要ないですし。
なんなら有休と別で女性休暇もあるので…続きを見る
生理休暇をとりたくなるほど貧血やめまいがあったが、男性上司に伝えづらい上、…続きを見る
女性は生理周期によって 、どうしても体調不良が生じてしまうことがある。
体調が悪そうな人がいたら自然に声をかけたり…続きを見る
また、生理による体調不良に関して職場で理解が「あると思う」という回答が75%だったことから、「休暇を取りやすい」と考えている人が多いと言えるでしょう。
職場で理解があると思った理由としては以下のようなものが挙げられています。
そもそも生理についてネガティブな話題が出たことがないから | 54.8% |
生理による体調不良で休む人を見かけたことがあるから | 31.2% |
休暇取得を促してくれた/促しているところを見たから | 17.1% |
具体的な取り組み事例があるから(理解のための研修・生理用品の備蓄など) | 16.1% |
そもそも生理についてネガティブな話題が出たことがないから、という回答が最も多い54.8%となりましたが、角度を変えて見ると、そもそも生理休暇への理解や関心がないから、とも考えられるかもしれません。
また、「生理による体調不良で休む人を見かけたことがあるから(31.2%)」という回答に加えて、次の章で言及している「生理休暇を利用したことがない理由:周りに利用者がいない/利用しにくい雰囲気があるため(37.8%)」のデータからすると、周囲の利用状況は本人の利用の意思決定に大きく関与すると推測することもできるでしょう。
他にも、職場で理解があると思った理由として以下の理由が挙げられていました。
- 女性が多い職場だから
- 体調不良の理由をわざわざ聞かれないから
- 制度があるから
- 何事もなく休暇を取れるから
- 生理含め体調悪い時に寄り添う言葉をかけているところを見たから
- 生理休暇に関わらず休暇取得のハードルが非常に低いから
- 休暇以外の育児看護に対しても柔軟に対応してくれるから
- ハラスメントにうるさい会社だから
- 会社のサービスが産婦人科に関わるため
- 社会的な一般常識として皆ある程度理解しているから
- 不妊治療にも理解があるので
従業員の男女比・制度などに加え、会社のサービス性などの職場環境も、生理休暇の利用状況に大きく関係していると考えられます。
生理休暇という名前が休暇を取りにくくしている?
この章では働く女性が生理休暇を出さない理由を、生理休暇の利用率のデータとともに解説します。
一つ前の章では、生理による体調不良に関して「職場で理解がある」と考えている人が多いと言うことがわかりました。しかし、生理休暇の利用率は12.8%と未だ低い状況ということが伺えます。
休暇をとりやすいと思えるような職場の理解があるにもかかわらず、生理休暇の利用率が低いのには何か原因があると考えられるでしょう。
そこで、Job総研では大きく分けて以下の2つに注目することにしました。
- 「生理休暇」という名称の影響
- 出世を気にする女性の存在
詳しくは、本章と第三章に分けて解説していきます。
第一に、生理休暇という名称が休暇を取りにくくしていることも考えられるかもしれません。
「生理休暇の名称が原因で取得しにくいと感じた経験はありますか?」の問いに対して、「経験がある」と回答した人が77.1%であることがわかりました。
JobQ内でのコメントも一部ご紹介します。
【Job総研/公式】「生理休暇」の名称が原因で取得しにくいと感じた経験はありますか?
些細なことでも構いませんので、休暇をとりにくいと感じたエピソードを教えてください!
また、取りにくいと感じる場合、どのような名称であればとりやすいと思いますか?
今勤めている会社では生理休暇から、人間ドック等にも使える「ウェルネス休暇」に変わりました。
理由なしで申請できる…続きを見る
「体調不良」で有給消化でいいのでは。生理休暇あげるから生理かどうか教えてねってことですよね。
休む女性側の意思で生理である旨を伝えることは何ら問題ないですが。上司が部下の…続きを見る
また、上記の問いで「生理休暇の名称が原因で取得しにくいと感じた経験がある」と回答した人に向けた「生理休暇以外の名前なら利用したいと思いますか」の質問では、「利用したいと思う」人が97.2%もいることがわかっています。
これらのことから、生理休暇が取りにくいと感じるのには「生理休暇」という名称が関係していると言えるでしょう。
生理休暇をとりにくいと感じる女性の心理
これまでにJobQに寄せられた回答をもとに、生理休暇を利用したことがない理由としては以下の4つが考えられるため、Job総研で実際にアンケートを実施しました。
休暇を利用するほどの体調ではなかった | 51.0% |
周りに利用者がいない/利用しにくい雰囲気があるため | 37.8% |
仕事の兼ね合いで我慢せざるを得なかったため | 17.5% |
申請先が男性上司だったため | 16.8% |
生理休暇を利用したことがない理由として、「休暇を利用するほどの体調ではなかった」という回答が51%と、最も多いことがわかっています。
また、「周りに利用者がいない/利用しにくい雰囲気があるため」という回答が40%近くあることから、利用したいと考えていても周囲の利用状況を伺いながら、結局「利用しない」と判断する人が多いと考えられます。
「仕事の兼ね合いで我慢せざるを得なかったため」という回答が37.8%だったことに加え、自由記述の回答で「有給でないので我慢して出勤」や「薬で生理を止めている」などが挙げられたことから、我慢をしなくても良い職場の対応や治療に関するサポート制度など、改善の余地が大いにあると考えられるでしょう。
他にも、以下のような理由が自由回答で寄せられました。
- 生理休暇がない
- アルバイトなので
- あるようだが誰も取得していない
- 制度があることを知らなかった
- 給料が出ないため
- 生理休暇という制度が男女平等に反するためありません。その代わり、男女ともに取得可能な月次有休があります。
- 生理休暇の制度はあるが、ほんとうに生理で辛く休みたいときは有給を利用すると思う
- 薬で生理を止めている
- 有給休暇として取得したことしかないため
「生理休暇がない」「生理休暇の制度を知らなかった」などの制度に関する理由から、使い方の浸透度が浅いことが関係しているのではないかと考えられます。
生理休暇の伝え方に関する記事は、「生理休暇の伝え方のマナー|男性に言いにくい時の例文を働く女性のためにご紹介!」 で解説しています。
また、「生理休暇は無給(給料が出ない)のため利用しなかった」という意見もあることから、女性特有の症状に関して企業ごとに対応や制度が異なっていることも伺えるでしょう。
生理休暇という名の休暇ではなく、「月次休暇」として性別問わずに付与される休暇が存在する点は、新たな発見と言えるかもしれません。
生理の重さと出世には関係性がある?
調査結果では、生理の重さと出世の関連性について「どちらかといえばある」と回答した人が一番多く、31.6%でした。
生理の重さと出世の関連性が「とてもあると思う」「あると思う」「どちらかというとあると思う」と回答した人は全体でも56.9%となり、半数以上を占める結果となりました。
また、生理の重さと出世の関連性が「とてもあると思う」「あると思う」「どちらかというとあると思う」と回答した男性は53.5%に対して、女性は62.5%となりました。
特に注目すべきポイントは、生理の重さと出世の関係性の捉え方には、性別によって10%以上の差があることだと言えるでしょう。例えば男性上司がいた場合、男性上司は「生理痛で休んでもキャリアに影響しない」と考えている一方、女性部下は「キャリアに影響するのでは」と不安を覚える人がいると想像できます。
上司の理解があっても、このような男女の認識におけるギャップによって、生理休暇取得をためらう女性が一定数いるのだと考えられます。
「生理の辛さ」はどの程度?認識にギャップがある?
「女性が生理休暇を使うのはどのくらいのレベルだと思いますか」という問いに対して、男性の59.0%が「レベル3:鎮痛剤を飲んでも痛みがあり、ときどき休息を挟むことがある」と回答しており、他の選択肢と比べて、回答率が集中しています。
しかし女性で「レベル3:鎮痛剤を飲んでも痛みがあり、ときどき休息を挟むことがある」と回答した人は46.3%、「レベル4:鎮痛剤を飲んでも痛みがおさまらず、横になる必要がある」と回答した人も32.3%おり、この2つがボリュームゾーンとなっています。
男性が生理を「さぼど辛くないのに、休む」と捉えていたり、そのような雰囲気が社内にあったりする場合、女性も自分の評価を下げないために休暇取得を躊躇うのではないでしょうか。
このギャップから、生理の体調不良を、男性が実態より軽く想像してしまっていることが考えられるしょう。
生理休暇を取得する女性の辛さと、男性がイメージしている体調不良にはギャップが生まれていることも、女性が出世との関連性を危惧する心理状態が生み出されていることに関係しているかもしれません。
そのため、生理について異性の上司の理解を深めると同時に、女性が休暇を取得するための心理的安全性を確保・向上することも大切だと考えられるでしょう。
またJobQに寄せられた回答についても、一部のコメントをご紹介します。
【Job総研/公式】女性が生理休暇を使うのはどのくらいの辛さですか/だと思いますか?
レベル1:軽い下腹部痛はあるものの日常生活に支障はなく、鎮痛剤を飲まなくても普段通り生活できる。
レベル2:鎮痛剤を飲むと活動ができる。
レベル3:鎮痛剤を飲んでも痛みがあり、ときどき休息を挟むことがある。
レベル4:鎮痛剤を飲んでも痛みがおさまらず、横になる必要がある。
レベル5:鎮痛剤が効かず、普段通りの生活が困難。
人にもよると思いますが、本来ならレベル3で…続きを見る
最多の理由は「休む印象がつくと任せてもらう仕事が変わるから」
生理の重さと出世の関連性があると思う理由について、「休む印象がつくと任せてもらう仕事が変わるから」が最多で62.8%の結果となりました。
ほぼ同率で「仕事の進捗などのパフォーマンスが下がるから」が62.0%と2番目に多い結果となっています。(複数選択可能)
調査のコメントには「必要な時にいないケースが多くなると影響は少なからずあるとは思うから」や、「期限や計画が短期的なものばかりで、正社員である必要性や代替要員で対処できるように会社運営ができてない」という声が上がっていました。
またJobQに寄せられた回答についても、一部のコメントをご紹介します。
【Job総研/公式】体調不良と出世に関係性があると感じたエピソードは?
体調不良と出世には少しでも関係性があると思った場合、 些細なことでも構いませんので具体的な理由をエピソードと併せて教えてください!
何年か前まで、私の所属している会社では「コンピテンシー評価」といって、評価される人の行動特性に基づき評価を行い、これがA評価二期連続で上の位に上がれるという仕組みになっていました。
体調不良を起こす人は、…続きを見る
このように休暇を取得しづらいのは、業務の体制が一因とだとも考えられます。
生理のような突発的な休暇が必要な場合はなおさら、出世との関係を心配してしまうでしょう。
働く女性が生理休暇の取得を安心してできる状態にするためには、出世に影響しないような業務の体制を整える必要がありそうです。
生理休暇取得率をあげる3つの改善策
これまで、生理休暇の取得率が低い原因には「生理休暇という名称」や「突発休暇が取りづらい業務の体制」がありそうだとわかりました。
具体的に生理休暇の取得率をあげる改善策として、何が実施できそうかを考えてみましょう。
生理休暇という名称を変える
生理休暇を取得できる雰囲気があったとしても、「生理休暇」という名称に抵抗のある人が一定数いることがわかりました。
調査のコメントには「女性には、年休の日数をプラスする」「誰でも使える体調不良休暇だといい」という声が挙がっており、休暇を取得しても「生理」だとはわからないように配慮する名称に変えることが求められていそうです。
生理で仕事を休むのは甘えじゃないと理解する
男性と女性で、想定している生理の辛さには差があることがわかりました。そのため、男性は想像しているよりも女性の体調は辛い可能性があることを意識することが大切でしょう。
また、女性は自身の体調に無理をせず、生理休暇を取得しましょう。生理休暇を申請するとき、上司への伝え方を迷ったら「生理休暇の伝え方のマナー|男性に言いにくい時の例文を働く女性のためにご紹介!」も、ぜひ参考にしてください。
調査のコメントでは「しょうがない事だとは思うが、その分を取り返そうと頑張ろうとしてくれれば、お互いに気持ち良いと思う。」という意見もあり、男性と女性のお互いが、配慮し合うことも重要だと考えられます。
生理休暇が取りにくい業務体制を見直す
生理休暇はもちろん、社員が体調に無理せず働けるためには、突発的な休暇も取りやすい会社・業務の体制を整えることが大切でしょう。
まずは、業務が属人化しないように見直したり、日頃から休みの社員をフォローし合うような雰囲気づくりを試してみたりすると良さそうです。
生理休暇は取りにくいのかに関するまとめ
この記事では、調査結果から以下の点を考察しました。
- 体調不良による休暇は取得しやすいにもかかわらず、生理休暇の取得率は低いこと
- 生理休暇が取りにくい原因として、名称が関係している可能性があること
- 生理の辛さについては、女性と異性の上司との認識にギャップがあること
- 出世との関係性を危惧して、休暇を取りにくいこと
生理休暇を取得しやすい環境をつくることが、女性活躍の更なる推進に貢献し、誰もが働きやすい社会の実現につながるのではないでしょうか。
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